Bluetoothイヤホンが有線の音質に勝つために超えなければならないハードル。無線と有線を比較してみた。

♨の人

-

スポンサーリンク

Bluetoothイヤホン。旧来のイヤホンと比較して線がないため、これまで苛まれてきた断線や非防水、タッチノイズなどから開放されるとても便利なガジェットです。

昔のBluetoothイヤホンはほんと酷いもので、ノイズ入るわ途切れるわ遅延するわ音は悪いわでとてもオーディオ機器とは呼べない代物ばかりでした。

しかし、AppleがAirPodsを発売してからというものの市場は一変。シェア率は増加の一途を辿り、大手オーディオメーカーがこぞって参入。
爆発的な進化を遂げ、今や音質面では有線とほとんど変わらないレベルにまで成長しています。

しかし、Bluetoothイヤホンは所詮は無線。有線イヤホンの音質には敵いません。

というわけで、Bluetoothイヤホンがなぜ有線イヤホンに音質で勝てないのか?ということを解説していきたいと思います。




Bluetoothイヤホンは非可逆圧縮。上限があるのでCD音源を聞くことが出来ない


LDACとaptX HDはハイレゾ相当の音質をBluetoothで聞くことが出来るコーデックとして扱われています。

なので、最近はBluetoothイヤホンでもハイレゾが聴けるんでしょ?と思っている人も多いのではないでしょうか。

しかし、そもそもBluetoothは規格上限が1Mbpsなので、例えコーデックがLDACだろうがaptX HDだろうが完全なる無圧縮ではありません。

今や圧縮音源を聞くのならBluetoothでもなんら問題のないほどの進化をしていますが、そもそもの規格の上限が1Mbpsなので1411kbpsのCD音源すら無圧縮で送ることは不可能なのです。

勿論ハイレゾ音源はCDよりも情報量が多ので、96kHz/24bitの場合でも4608kbps。とてもじゃありませんがBluetoothなんかでは送れる代物ではないことがわかります。
あくまでもハイレゾ相当というキャッチコピーなだけで、完全にハイレゾを転送できるようになるまではまだまだ程遠いです。

一応Bluetooth5.0で規格上限が2Mbpsに上がったので、新たなコーデックさえ開発されればハイレゾは無理でもCD無圧縮なら送れるようにはなると思いますが……遅延や途切れの問題には悩まされることになりそうです。

しかし実際のところハイレゾとCD音源どころか、圧縮音源とCD音源ですらブラインドテストをして明確にデータとして示せば結果はこんな感じなので、LDAC以上のコーデックが必要か?と言われれば正直なところ謎ではありますが。

メモリプレーヤーの“音質評価”は難しい!? (2/2)

あまり知られてはいないが、電子情報技術産業協会(JEITA)には、メモリオーディオ機器の音質表示に係る業界標準規格「CPX-2601」がある。しかし、CPX-2601を使って実際に音質評価を記述した製品はいまだに存在しない。


実際私も普段はAACの320kbpsを主に使用しています。


Bluetoothの圧縮問題。これに関しては、LDACの開発の親でもあるSONYの製品が今のところ頭ひとつ抜けているでしょうか。



というのもSONYのBluetoothイヤホンはコーデック自体はaptX-HDやLDACと他と変わらないものですが、SONYの独自機能「DSEE HX」を搭載しています。

これはどういうものかと言うと、いわゆるアッブコンバート、つまり非可逆圧縮音源のデータを予測演算によって補完して音質向上を図るという技術です。
これによりBluetoothの圧縮された音源をなるべくロスレスデータに近付けることが出来るでしょう。

勿論アップコンバートなので、完全という訳ではありません。しかしこのような機能を搭載しているのは今のところSONYの一部のBluetoothイヤホンだけです。

となると、現時点では最もBluetoothで再生音源の高音質を実現する方式と言っていいでしょうね。






Bluetoothイヤホンは良質なDACやアンプを使えない。DAPやポタアンと比較すると差は歴然


はい。Bluetoothイヤホンと有線のイヤホンの音質差が大きい一番の理由がこれです。
ドライバーの性能だけならBluetoothイヤホンも有線イヤホンも正直ほぼ変わらないと思います。

(高いイヤホンはほぼ例外なくリケーブルできるのでBluetooth化も簡単ですし)

しかし、大きく違うのが有線イヤホンは外部DACやアンプを使えるという点です。

そもそも、音楽データはデジタルなのでイヤホンで音を鳴らすためにはアナログ信号に変換する必要があります。

その変換をD/Aコンバーター、DACと呼ばれるもので行い、その変換した信号をアンプで増幅してイヤホンのドライバーを鳴らす。
これが大まかなイヤホンの仕組み。

このDACとアンプが高品質であればあるほど、イヤホンの音質が良くなります。

DACとアンプはイヤホンジャックやスピーカーの搭載されたデジタル機器ならどんなものにも搭載されていますが、本格的なオーディオ製品のDACやアンプはかなり高品質なのでそれらを使用するとイヤホンの音質もかなり向上します。



イヤホンが同じなのに音質がそこまで変わるか?と疑問を持たれる方も多いかもしれませんが、これは聞き比べれば違いは明白。
特に多BAの高級イヤホンなどが顕著ですが、分離感や音のスケールが本当に同じイヤホンか疑いたくなるほど変化する事も普通です。

音質に定評のあるポタアン「iFI-Audio nano iDSD Black Label」をレビュー。スマートフォンとの比較と私の使い方

音質にこだわりの無い私だが、ポタアンを買ってしまったiFI-Audio アイファイオーディオ nano iDSD Black Label 高出力ポータブルヘッドホンアンプ【送料無料】 【1年保証】価格:29160円(税込、送料無料) (2020/8/22時点)楽天で購入3万円のポータブルアンプ。正直なところオーディオに興味ない人からすると3万円のイヤホンですら馬鹿げた話だと思いますが、これはさらにその上を行きますね。普通の人からするとドン引きレベルか...



で、これでなぜBluetoothイヤホンが不利になるかという事なのですが……Bluetoothイヤホンは内部にこれらDACとアンプを全て埋め込む必要があるのです。


オーディオは体積が大きいほど有利です。
有線イヤホンなら、DAPやアンプがどれだけ大きくても重くてもそもそも線で繋ぐので問題になりません。


しかし、Bluetoothイヤホンの場合はどうでしょう。
あまりに重いと無線の意味が無いですし、完全分離型ワイヤレスイヤホンなどはそもそもそこまで本格的なDACやアンプを内蔵することなどできません。

なので、どうしてもDAPやポタアンと比較してDAC、アンプが貧弱になる。
結果として、そもそもまともなDACとアンプを使用する前提の有線イヤホンと同じ土俵に立てないのです。

これを解決する方法は今のところありません。

ネックバンド式ならワンチャンスあるんじゃない?と思われるかもしれませんが、エントリークラスならともかくそれなりのDAPやポタアンの基盤はかなりデカいです。

DAP-ASIC 箱詰め検討中

まずは基板上の腑分けを… 将来的な方針も含めた実装検討 ★SPDIF:ケースへ付けるコネクタはノイトリックのBNCかな。現状パルストランス噛んでないので、パルストランス噛ませる気だが、基板→ケースのノイトリックコネクタの間はケーブルが入るので、そのケーブルにパルストラン...



またBluetoothの時点でバッテリーやレシーバーを組み込んでいるのに、そこに更にそんなものを詰め込めばかなり本体が大きく重たくなってしまうでしょう。

それにDAPやポタアンはなるべくノイズを減らしたり音質を向上させるため、内部の配線などにも非常に拘っています。
ですから、そもそもドライバーやバッテリー、マイクなどでぎゅうぎゅうの本体内に埋め込むという発想が無謀なのです。

本体の大きなヘッドホンならワンチャンあるかもしれませんが……そもそもの話そこまで高音質を保ったまま小型化&軽量化できるのならクソでかいポタアンや据え置きヘッドフォンアンプなんか買うやつは居ないですよね。


そしてダメ押しとばかりに、バッテリーの枯渇問題、本体の発熱もあります。
DAPやポタアンって結構大容量のバッテリー詰んでますからね。それでもポタアンなんか10時間持たなかったりしますから。

あとは結構発熱します。それなりの筐体サイズであの発熱量のチップを無理に詰め込んだイヤホンなんか誰も耳に付けたく無いでしょう。

今現在、有線でDAPやポタアンに繋いだ時レベルの音質をBluetoothイヤホンで実現させると物理的にこうなります。

Bluetoothヘッドホンアンプの新定番! FiiO BTR3を試してみる

ポタアンのFiiO、入魂の一本。BTアンプ・BTR3を実際に使ってみたレビュー!       だいせんせいです。   皆様もご存知のことと思いますが、ここ数年でBluetoothイ



もはや無線じゃない。
はい。つまりは無理ってことですよ。

あとはそもそも高品質なDACやアンプを埋め込んだらそれだけ値段高くなりますからね。

小型化すると高くなるし。それだけで3~4万はしそうだ。




Bluetoothイヤホンが有線イヤホンに並ぶには、まだまだ様々なハードルがある。但しBluetoothイヤホンは今後どんどん売れると思う


結論として、Bluetoothイヤホンが有線と音質で並ぶためには

・DACチップやアンプの超小型化、超低消費電力化の実現
・無線でロスレス音源を遅れるようになる新転送技術


が必要になります。

また上の小型化については、ただ小型化したチップを作るだけという意味ではなく、現時点でのDAPやポタアン、据え置きヘッドフォンアンプなどをあのサイズにする必要が全く無くなるほどの技術の発展が必要となるでしょう。

ただチップが小型になっただけなら、DAPやポタアンもさらに進化するでしょうからね。Bluetoothが有線と並ぶには、もはやDAPやポタアンなどを使用するメリットがなくなるくらいでないとダメです。
それこそ据え置きヘッドフォンアンプなんて過去の遺物と化すくらいには。


あとはバッテリーの劣化問題もありますね。せっかく高級なDACやアンプを搭載しても、バッテリーが劣化してしまえば全く使い物にならなくなります。
耐用年数が短すぎるのも弱点といえば弱点ですね。

AirPodsを筆頭とするBluetoothイヤホンはリチウムイオンバッテリーの劣化でまともに使える時間が短くなっていくからコスパが悪い問題

最近のスマートフォンは、薄さや軽さ、スペースの削減などの理由によりイヤホンジャックを廃止してしまうものが増えたイヤホンジャックが無くなるとなると、イヤホンを使うためにはアダプターを噛ませるか、Bluetoothを使用するしかなくなってしまう(アダプターは充電しながら使用できないという問題と、充電コネクタへの負担の増加という問題もある)iPhone7でイヤホンジャックが廃止された際はBluetoothイヤホンは遅延や音質など...




しかし、私個人の意見としては今後有線イヤホンはどんどん売れなくなっていくと思います。

そもそもDAPだのポタアンだの言ってるのなんてオーオタくらいしか居ませんし、今後はBluetoothの遅延もどんどん解消されていくでしょう。
そうなれば遅延があるから……と敬遠していた音ゲーユーザーなどはほとんどBluetoothに流れていってしまうでしょうね。

更に言うと、スマートフォンのイヤホンジャックの廃止の風潮も致命的。
あれだと充電しながら有線イヤホンを使えません。それならBluetooth買うわ、って人も多いと思います。

音質に関しても、ぶっちゃけもう現状でもSENNHEISERやSONYの上位モデルを買えば殆どの人は満足できるでしょう。

そしてなによりやっぱり無線はストレスフリー。断線の心配もないし、煩わしい線に縛られることもない。
音質が変わらずバッテリーの劣化問題が解決したら、私も正直なところ絶対無線に移行します。

ファッションやデザイン的に見ればイヤホンの編み込みコードとかは嫌いじゃないですけど、やっぱ利便性には勝てませんしね。

ただやはり技術的にはあと数十年はかかるんじゃねーかなってのが本音です。

てなわけで。

以上です。

ブログパーツ

関連記事

スポンサーリンク