安いのに高級ヘッドホン並の音質?平面駆動型 FOSTEX T60RPをハイエンド機と比較レビュー

♨の人

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私はしばらく前までイヤホン専門だったのですが、イヤホンスパイラルが終わると今度はヘッドホンにも興味が出始めて、この前beyerdynamicのT5P 2nd Generationという機種を購入しました。

ベイヤー T5P Gen2を購入したのでイヤホンとヘッドホンの音質を比較レビューしてみた【beyerdynamic T5P 2nd Generation】

音楽が好きで、尚且つイヤホンが好きなら、色んな機種が気になるのは殆ど必然のようなものだと思います。イヤホンなんてひとつあれば十分、というのが普通の人の考えだと思いますが、イヤホンというものに魅せられた人間は常日頃から購買意欲と戦っているのではないでしょうか。かく言う私もそういうタイプで、最初は数万円程度のイヤホンとアンプを購入して終わりにするつもりが、今や10万円単位のお金を普通に使ってしまいました...



このヘッドホンが非常に素晴らしく、今まで感じたことの無い音のスケール感、そして空気感の再現性に感動し、今ではイヤホンもヘッドホンも両方好きになりました。

となると当然他のモデルが欲しくなってくるのですが、これ以上所有する機種が増えたところでぶっちゃけ使い分けとか困難なので、低音がガンガンに出るメタルコア特化モデルがあったら欲しいな、なんて思いながら、特に買い足す気もないのにeイヤホンで安くなってる中古のハイエンドヘッドホンを探したり、オーディオレビューを読み漁っていました。

そんな中で見つけたのが、FOSTEXのT60RPというヘッドホンです。


価格:33000円
(価格は2021年2月13日 12時00分の情報です)

最初は3万円程度のエントリークラスヘッドホンなど全く興味すら湧かなかったのですが、レビューを読み漁ってみると定位感がとんでもなく良好で、ハイエンド機と対等に戦えるような高いポテンシャルを持った平面駆動型ヘッドホンとべた褒めされているので、強く興味を持ちました。






「3万円のヘッドホンがハイエンド並みの音質」なんて聞くと、お金のない貧乏な私としては飛びつかずに居られません。

私も最初はどうせよくある誇張表現だろうな、なんて思いました。値段と音質は直接関係はなくともやはり安価な製品と高価な製品では差が出るのが当然ですし、差を出さなければ同じFOSTEXの高価な機種の存在価値がないからです。
(昔DAISOのイヤホンがイコライザーで3万円相当とか話題になりましたよね)

しかし、調べてみると割となくは無い話と思えてきたのです。

まず、ノウハウのある老舗の大手メーカーと、歴史も浅く手探りで少数生産が基本のガレージメーカーでは同じ値段でも性能には天と地ほどの差が出ることは想像に難くありません。
(特に大手メーカーはハイエンド機種を制作して身につけたノウハウを下位機種に流入することで、安価に音のいい製品を作れる)

またオーディオメーカーは値段の付け方も割と適当というか言い値みたいな所があるので、20万30万のヘッドホンより10万円のヘッドホンの方が良い、なんてことも普通にあります。
(いわゆる10万超えたら好みの差というやつです)

で、FOSTEX(フォスター電機)がどうかというと、このメーカーは高級スピーカーやヘッドホンなどのドライバーを昔からOEMで作り続けている確かな信頼のおける会社ですし、FOSTEXブランドでは1974年に日本初となる平面駆動型ヘッドホンを発売しており、このT60RPにもそのRPドライバーが使用されています。

尚且つこのT60RPは安価ながらも同社の平面駆動型では現行フラッグシップ、集大成となるモデルのようです。
(過去にはTH500PRという税別74000の平面駆動ヘッドホンを販売しています)

更に下位モデルのT50RPは振動板のみ共通でもっと安く、2万円程度のプラスチッキーな外観のチープなモデルなのですが、改造することで値段からはありえない高音質になるということで昔から改造ベースとしても非常に良く使われているそうです。
(調べてみると1.2万のヘッドホンを改造して12万の音にするというワードが散見されますし、明らかにヘッドホン本体の値段より高そうな改造を施したモデルの写真も沢山出てきます)

ドライバの品質が高くなければいくら改造したところで所詮は大したものにはならないので、ドライバの品質が非常に高いことが伺えます。過去からずっと作られてきた品質の高いドライバを、最新の技術でチューニングした集大成モデル、T60RP。

そういう感じで調べれば調べるほど、もしかして本当に凄いヘッドホンなのではないか?と思えてきました。

そして、私の背中をいちばん強く押したのがこのレビュー記事です。

Fostex T60RP ヘッドホンのレビュー

オーディオ機器、ヘッドホンなど



何処の馬の骨かもわからないような匿名レビュアーの書き込みとか、もはや手段が目的になってる改造マニアとかが騒いでるだけならともかく、私が個人的にいちばん信頼しているオーディオレビューサイトの「sandal audio」がここまで高評価しているとなるとさすがに信用せざるを得ません。

ちょっと名前がわからないので今回の記事ではSandal氏と呼びますが、同士は自他ともに認めるヘッドホンマニアで、第一線で活躍する有数のレビュアーです。

当然名器からキワモノまでありとあらゆるヘッドホンを聞いて、尚且つオーディオライターのようなポエムではなく電気的な話も交えて多機種と比較し、ダメなところはダメとはっきり言い切る信頼性の高いレビューを日夜投稿しています。そんな人がLCD-4ZやHD800などの高級ヘッドホンと比較して劣っていると感じず、それどころか「他社の何十万円もするようなハイエンド平面駆動型ヘッドホンと互角で健闘するような優れたヘッドホンだと思う」「10万、20万で売っていてもおかしくない」なんて明言しているのです。

というわけで、このレビューを読んだ時に次に購入するヘッドホンをこの機種に決めました。

たった1人のレビュアーの意見にここまで影響される私はさぞ滑稽に見えるかもしれませんが、私は権威性を重視するタイプの人間なのでこればかりは仕方ありません。

それにもし音質が値段相応だとしても、最悪平面駆動型、それも安いとはいえフラッグシップなので、よくあるダイナミック型ヘッドホンと比較して持て余すことは無いだろう、というのも購入に踏切った理由の一つです。
(もしこのヘッドホンがなんてことないダイナミック型ヘッドホンの下位機種なら、さすがに私も購入していません)

またFOSTEXのRP振動板モデルはスタジオモニターヘッドホンとしても有名なモデルなので、最悪SONYのCD900stとかのようなリファレンスモデルとしても使えるという保険もあります。
(私が所有しているイヤホンやヘッドホンは癖のあるモデルばかりなので)





バランスケーブル+バランスアンプとのセットT60RP(bp)が安すぎる



価格:56511円
(価格は2021年2月13日 12時00分の情報です)

このヘッドホン、単品で購入すると35000円程度なのですが、Amazonでは数量限定でHP-A4BLというFOSTEX製据え置きバランスヘッドホンアンプ、そして純正XLRバランスケーブルとのセットでも販売されていたりします。

このBalance PackはFOSTEXのショップとAmazonにて並行で販売されているものなのですが、計算するとなんと元値が10万円相当もします。

しかし、お値段はなんと55000円ほどと半額近くにまで落ち込んでいました。そもそものヘッドホンが超コスパなのに、更にそこからこんなお得なセットという訳の分からないような大盤振る舞いです。即刻飛びついてしまいました。
(FOSTEX公式ショップでは88000円なのに、なぜAmazonだとこんなに安くなっているのかはわかりませんが)


ちなみに私が購入した時点では在庫は5つほどあったのですが、このツイートのせいかどうかは知りませんが二日で在庫無しになっていました。


価格:48664円
(価格は2021年2月13日 12時00分の情報です)

アンプに関しては単品で5万円程度とこれも大した値段ではないエントリー機種ですが、ACアダプター駆動の据え置きで、更にTPA6120を2枚使用しXLRバランス端子を備えているということで、充分使えるなと思ったのでこちらのセットを購入することとしました。

ちなみに前機種のHP-A4は価格.comの据え置きヘッドホンアンプ売れ筋ランキングで9位とのことで、品質自体はまあ信頼できると思います。

そしてついでにマホガニー材のヘッドホンスタンドも付属してくるみたいです。これも単品で購入すると3000円くらいはしそうですね。使うかどうかは別としてですが。





ヘッドホンの質感は良好。高級感がありイヤーパッドは上質


外箱は大きめです



ヘッドホン本体の質感は思った以上に良好です。写真よりもテカテカ感がなく、鈍く光るマットな質感は温かみがあり、お高い家具を彷彿とさせます。
イメージとしてはギターやベースの指板のような感じでしょうか。
多少ザラっとした部分もありますが、加工制度は非常に高いです。

高級感と言うほどでは無いですが、安っぽさは全く感じません。


3倍以上高いbeyerdynamic T5P 2ndと並べても、どちらも同じく高そうに見えます。

因みに本物、というか本来のマホガニーというのはセンダン科マホガニー属に属する植物の総称なのですが、マホガニーは代替品が多く出回っており、この製品に使用されているアフリカンマホガニーというのもセンダン科アフリカマホガニー属の代替品です。
(そもそも本物のマホガニーを使用していたら、それこそこんな値段で売れるわけが無いのですが)

また削り出しの無垢材ではなく、ポリウレタンのクリア系塗料が一応塗ってあるとの事です。


ハウジングやスライダーなど主要パーツにプラスチックを極力使用していないのが良いですね。プラスチックハウジングは見た目や音の他に耐久力にも影響しますから、これは嬉しいです。

イヤーパッドは柔らかいです。T5P Gen2のようにモチモチなウレタンフォーム系ですね。


ケーブルは布巻きの細いタイプです。beyerdynamic T5P 2ndのまるで家電のような極太ケーブルと比較すると貧相で心許ないように思えますが、柔らかく取り回しは非常に良好です。
プラグ部は普通のプラスチックです。これもT5P Gen2のがっしりとしたアルマイトプラグを見ると少し安っぽく思えますが、よくあるバリなどもなく加工制度は非常に高いと思います。


付属品はこんな感じです。
取扱説明書にはこれまでのRP振動板採用モデルの情報がざっと書いてあります。1974年から続く、ハイエンドでも販売されたことのあるシリーズ集大成モデルがこのT60PRとの事。非常に安価ながら侮れないのはこういう所なんでしょうね。

ちなみに手前のはFOSTEXのクリアステッカーなのですが、こんなんどこに使うんだってツッコミはさておき遊び心があっていいと思います。

(こういうのがあるだけでなんとなく暖かい気持ちになります)


よく雑誌の巻末に付いているようなアンケートのハガキが付いているのが日本企業っぽくて面白いですね。スピーカークラフトの経験は?とかよく見るWebサイトは?とかなかなか面白そうなアンケートでした。

柔らかくすべすべした質感のポーチも付いています。使うかどうかはさておき、質感は非常に気持ちいいです。






HP-A4BL。コンパクトながらどっしりとした美しい据え置きヘッドホンアンプ



2in1ノートパソコンなんかが入ってそうな外箱です



アンプは150(幅)× 34(高さ、ゴム足含まず)× 157( 奥行、突起物を含む)mmと、イメージよりは小さいです。

見た目からはmicro idsd BLと対して違わないようにも見えるのですが、持ってみると比較にならないほど重いので驚きました。重量感がしっかりとあるので、安っぽさは微塵もありません。

天板はアルマイトなのですが、同じくアルマイトのmicro idsd BLと比較するとあまりにも指紋の付着が酷く、また一度着くとなかなか取れないのでなんだかなぁという感じですね。艶消しのようなマットな質感なのが影響しているのかも知れません。


このモデルは通常のものと違って、側面パネルがヘアライン加工のブロンズアルマイトとなっています。この辺は好みだと思いますが、実物は写真よりも高級感があっていいですね。指紋や傷は付きやすそうですが、加工制度は非常に高く鈍く光る銅色がオーディオ機器っぽくていいと思います。

背面はこんな感じです。スペックは

USB端子:USB2.0 ハイスピード
対応サンプリング周波数:PCM:44.1 kHz、48 kHz、88.2 kHz、96 kHz、176.4 kHz、192 kHz/DSD:2.8 MHz、5.6 MHz、11.2 MHz
対応量子化ビット長:16、24 ビット
[DIGITAL IN]端子:角形オプティカル
フォーマット:S/PDIF
対応サンプリング周波数:44.1 kHz、48 kHz、88.2 kHz、96 kHz、176.4kHz、192 kHz
対応量子化ビット長:16、24 ビット


という感じで、まあ無難な感じですね。

個人的にはこのアンプ、同軸やステレオアナログラインなどのアナログ入力端子が無いのが非常に気になります。

というのも、私はmicro idsd BLというポータブルヘッドホンアンプを所有しているのですが、このアンプはDSD1793というDACチップを2枚搭載しており、尚且つPCM768kHz、DSD512に対応しているなかなかの高性能アンプなので、組み合わせられたら色々楽しいだろうな、と思うからです。

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またmicro idsd BLは極めて、というかポータブルでは最強クラスに高出力なので気にするだけ無駄かもしれませんが、もしこのポタアンでも鳴らせないようなヘッドホンが出てきた場合、このアンプがアナログ入力に対応さえしていればZEN CANのような据え置きアナログアンプという使い方ができます。


しかしこのアンプはデジタル入力しか対応していませんから(アナログアンプとして使用することを想定されていません)、どうしても汎用性という点では劣ります。

私はどうも収集癖と買い替え癖があるので、なるべくこの位のエントリ~ミドル対の製品はあまり購入したくないと思っています。なのでこの製品があと2~3万くらい高いミドルハイモデルなら完璧なのにな、なんて考えてしまいますね。
(もちろん値段で音質は決まりませんが)


ちなみに付属のUSBケーブルはなんだか面白い見た目です。最初は銀メッキ線の編み込みかなんかかなと思ったのですが、どうやらそうではなくこの銀色のやつは断線防止かなんかのための補強材っぽいです。

実際の品質についてはわかりませんが、一応オーディオメーカーの付属品と言うことでそこらで売ってる安価なUSBケーブルよりはノイズシールドなんかをちゃんとしているのでは無いでしょうか。





半開放型(セミオープン)ながら音漏れは少なめ。遮音性は低い


とりあえず普段リスニングするくらいの音量に合わせて、イヤーパッドを手で覆って音漏れを測ってみました。

セミオープンとのことで、確かにT5P 2ndより盛れる音の量は多めです。同室の人にはどんな曲を聴いているか丸聞こえですが、部屋を隔てれば夜中でも使えなくは無いと思います。

音漏れは高域が少しだけ減衰してそのまま曲が聞こえる感じでしょうか。T5P 2ndの籠った音漏れと比較するとだいぶ印象が違いますね。

音漏れは少なめなのですが、遮音性は低いです。ヘッドホンを付けても多少高域が減衰するくらいで、まるで何もつけていないかのように外の音が丸聞こえです。通勤や通学のお供として使うことは出来ないでしょうね。





音質は非常に良好。定位と分離が素晴らしいサウンド


とりあえずmicro idsd BLで聞いてみて、感じたことを書きたいと思います。
ECOモードでは音量不足だったので、Normalモードに上げました。

曲はアイドルマスターシンデレラガールズより、ヘッドホンのポテンシャルがはっきりと出る曲の「あらかねの器」をチョイスしました。ジャンルはオーケストラの歌モノです。


とりあえずファーストインプレッションですが、これは凄いです。音の輪郭が非常にはっきりしていて、定位が非常に正確だと感じました。
音像は大きいのに音の輪郭が明確で、尚且つ全ての音が分離して聞こえます。特に低域の粒立ちが非常に良好です。

ヘッドホン特有の音のぼやけのようなものがなく、かと言ってイヤホンのような音のこじんまりとした感じはありません。非常に音が濃いと感じます。

低域はカッチリした印象なのですが、割としっかり出ています。量感は普通ですが、きちんと重心を支えています。

個人的な印象として、音の輪郭をはっきりと出して定位感を鮮明に描くこの音の感じ、そして低域のパワーと解像度を両立したこの音はJH AudioのIEMに近しいものを感じました。それくらい音にしっかりとした密度と正確さがあります。

このヘッドホンは上から下まで見通してみても暴れているような帯域がなく、非常に上品かつ繊細な音色です。
これはモニターヘッドホンの派生系故か多少高域が硬い気もしますが、それを差し引いても凄まじい音だと感じました。




HP-A4BLとmicro idsd BLの比較。アンバランスとバランスでの変化は?


今度は据え置きヘッドホンアンプのHP-A4BLを、micro idsd BLと比較してみたいと思います。

まずアンバランス接続ですが、micro idsd BLと比較して、HP-A4BLはクリアですが少し線が細くシャリっとした音かなと感じました。
スケール感と低域の空間表現、アタックの奥行がmicro idsd BLの方が上手です。

あとヴォーカルがmicro idsd BLの方が艶っぽいです。膨らみがあります。

包み込まれるような音に広がりがあり、低いところまでどっしりとしたパワーのあるmicro idsd BLの方が好きですね

そこでバランス接続です。FOSTEX純正のXLRバランスケーブル「ET-RPXLR」を使用して、バランス駆動してみました。

すると、音のスケール感が飛躍的に広がって、アタックのメリハリも高くなりました。アンバランス駆動では1歩及ばない感じでしたが、バランス駆動でmicro idsd BLの音に並んだ気がします。

個人的には、バランス駆動ならmicro idsd BLより好きです。多少高域が刺さる気もしますが、ヴォーカルの線がよりはっきりとして澄んだイメージで、音の広がりもmicro idsd BLより広く感じます。

またバランス駆動故か、パワー感、要は音の濃さが上がり、アンバランスよりドッシリとした印象です。

比較するとmicro idsd BLは少し軽いというか、音が荒く聞こえてしまいます。低域のアタックの刺激などはmicro idsd BLの方が上なのですが、どうしても詰まったような、金属的なバリのようなものを感じます。HP-A4BLはより余裕のあるまろやかな鳴り方だと思いました。
また高域の解像度も幾分か上といった感じです。

もちろん聞く曲や組み合わせるヘッドホンによっても変わるのでしょうが、T60RP+バランス駆動で「あらかねの器」を聞く限り、micro idsd BLより好みでした。
micro idsd BLは据え置き並みに高出力ですから、単純に音作りとバランス駆動故の差でしょうか。





スマホやPC、DAP直挿しでは聞けない?


因みに、このヘッドホンは平面駆動方式なので、スマートフォンやDAPなどの非力な上流だと本来のポテンシャルを発揮出来ない、いわゆる駆動が難しいヘッドホンに属します。

しかし、試してみると意外とスマホ直でもそれなりに鳴ってくれました。音量もうるさいくらいまでは取れるので、インピーダンス50Ωというのはあながち嘘でもないと思います。

もちろん音場は酷く狭くなり、高音ジャリジャリで低音がブーミーな安っぽい音になってしまいますが、鳴らすだけならDAPとかでも全然大丈夫です。

因みに当然ではありますが、非力な上流で音が悪くなると言っても平面駆動型なので多ドラのLaylaほど極端な音の変化はしません。
(インピーダンスが一定なので)

上にも書いたように全帯域の質が落ちる、というような変化をするので、案外スマホ直でも聞ける音ではあります。
(Laylaはスマホとかだと本当に酷い音になるので)

もちろん私はアンプを通した音を既に聞いてしまっているので、比較すると酷く劣ると感じますが、案外安価なDAPやスマホ程度でも聞くことは充分できる印象です。





高級ヘッドホンT5P 2nd、ハイエンドイヤホンLayla Universal fitとT60RPを比較


それでは、他のヘッドホンやイヤホンと聴き比べて音質の違いを見ていきたいと思います。

アンプはHP-A4BLを使用しました。T5P 2nd、Laylaはアンバランス接続、T60RPはバランス接続です。
Layla Universal fitの低音調整ダイアルは2時の方向にしました。



・NOCTURNAL BLOODLUST REM


ゴリゴリのメタルコアです。全帯域が濃い音圧の高い曲です。
こういう曲は低音がしっかりしていないと全体的なイメージがかなり変わりますので、どんな差が出るか楽しみです。

まず、T60RPは超高域がかなりソリッドな印象なのですが、刺さることは無い不思議な音です。低域のパワー感もしっかりとあり、音が浮ついた感じもしません。

これはハウジング由来かドライバー由来かはわかりませんが、セミオープンながらメタルコアを普通に聞くことの出来る質の高い低音がしっかり出ています。低音の量感自体はそれほどではないものの、中域が濃いのと、アタック感がかなりソリッドかつハイパワーなので非常に迫力のあるサウンドに感じます。

かと言って音の立ち上がりや粒立ちが悪いかと言うとそうではなく、むしろ粒立ちに関してはかなり良好というか、とても輪郭のはっきりした音だと感じました。

次にT5P 2ndですが、やはり本物のハイエンド故か、高域の伸び、そして音の再現性は遥かに上で別格と言えるくらいです。

しかし、こちらは輪郭がT60RPほどハッキリしておらず、ヴォーカルのデスボイスがすこしぼやけて聞こえます。

またアタック感は同じくらいソリッドなのですが、こちらは低音の量感が不足しているため迫力が不足した、やたらと高域を押し出したような音に聞こえます。高域の質がとても優れているのでこれはこれで良いのですが、迫力というものはまるで感じられない気の抜けたサウンドです。

私はT60RPの方が好きでした。確かにシンバル類やスナッピーなど金物類の音の解像度はT5P 2ndの方が遥かに上ですが、個人的に好きな音は間違いなくT60でした。特にヴォーカルの輪郭が全くぼやけておらず、低音がしっかりとしているのが好印象ですね。

Laylaは聞き慣れたmicro idsd BLで聞きました。こちらはやはり非常に低域が濃く、また重いです。スピーカーの振動を身体で受けているような迫力のある音がします。

ヴォーカルは少し曇りのようなものを感じますが、低音の迫力でいえばピカイチだと思います。しかし、上記の2機種に比べるとどうしても空間にモヤのようなものがかかっており、クリアさがもう少し欲しいかなと言うところですね。



・あらかねの器


T60RPのファーストインプレッションにも使用した楽曲ですが、やはり非常に好きな音ですね。

解像度は並な感じがするのですが、音の密度が濃く、かと言って閉塞感があったり音がダマになったりしない非常にカラっとした心地いいサウンドです。

ベースや打楽器のサウンドの主張はやはり強いです。輪郭がはっきりとしているので、低音が他の帯域に干渉せずにスッキリと聞き取れます。かと言って音像が痩せたような印象は受けず、マイルドでふくよかな心地のいい低域の甘い響きを感じられますね。

T60RPは、響きを上手く制動したというか、反響、いわゆるホールトーンとかをあまり強く感じさせないサウンドだと思いました。色々な音が混じりあった空間的なトーンというよりは、非常にハッキリとしたメリハリのあるクリアなステレオイメージが得られます。そういう所がモニター的なのですが、それにしては非常にパワーのある聞いていて楽しい音です。

次にT5P 2ndを聞いてみると、その差が明確に分かります。

まず、T5P 2ndのサウンドはあまりにも凄まじいです。ヴォーカルの音像がコンサートホールのように響いて、非常に艶っぽいというか、伸びやかな美しい音色になっています。
またその他の楽器も、非常にふくよかに響いてとても艶っぽく美しい音色です。T60RPと比較すると、臨場感が段違いでため息が零れます。

アタック感もT60RPのように音の刺激をゴリゴリと直線的に押し出すのではなく、空間を揺らす低域の響きなどを上手く表現している感じです。それ故に音の距離感や定位感、音の制動性、つまりモニターとしての性能はT60RPの方が上ですが、音楽的に見た場合T5P 2ndの圧勝でしょう。

T60RPも非常に素晴らしいとは思うのですが、T5P 2ndはそれを遥かに超えており、一聴して音の美しさに飲まれてしまいます。これがハイエンドたる所以なのかな、などと思いますね。

T5P 2ndの色濃く味付けされたあまりに艶のある美音の前では、モニターライクな輪郭の明確さが非常に華のないサウンドに思えてしまいます。T60RPを聞いている時はすごくいいように思えていたのですが、T5P 2ndはそれを軽く超えてきました。T5P 2ndを聞いた後にT60RPを聞くと、こじんまりとした安っぽいサウンドに思え、強い物足りなさを覚えます。

輪郭や定位のはっきりした低音、ヴォーカルなども、T5P 2ndと比較すると嘘っぽいというか、あまりにも整理されすぎており非現実的で、臨場感がなく物足りないですね。

取り繕われすぎているとでも言いましょうか。とにかくこれはT5P 2ndが圧倒的でした。

なんというか、やはりT60RPはBAイヤホン的な聞こえ方に近しい気がします。JH Audio製IEMの音をヘッドホンにしたらこんな感じなんじゃないでしょうか。


というわけで、Layla Universal fitと比較してみました。

するとどうしたことか、T5P 2ndと比較すると酷く濁ったようなサウンドというか、こんな音だっけ?ってくらい籠った音に聞こえます。

流石におかしいと思い、アンプをmicro idsd BLに変えました。すると不思議、比較にならないほどクリアな音になりました。

LaylaをHP-A4BLに接続すると、まるでスマホに直差ししたような酷く籠ったサウンドになってしまいます。
原因は出力インピーダンスが高いからでしょうか。明確なことはわかりませんが、多ドラIEMなどをこのアンプで鳴らそうと思っている人は注意してください。

さて、Laylaのサウンドですが、やはりT60RPの音はイヤホンに似ています。というか、T60RPと比較するとLaylaは中広域が濁ったよつなウォームなサウンドに聞こえます。

その分アタックはマイルドで音は濃いのですが、どうしても濁りのようなものがあり、それが非常に気になります。

T60RPはLaylaの中音域の濁りを取り払って、多少高域を強くしたサウンド、という感じでしょうか。低域はLaylaの方が比較にならないほど重く強いのですが、正直なところこの曲に関してはT60RPの方が断然好みですね。

比較するとLaylaは音の出し方はT60RPと似ているんですが、非常に曇ったサウンドというかウォームに聞こえます。
正直なところこの曲だけを聞いた感想なら、このイヤホンに37万円の価値は間違いなく無いと感じますね。



・Lunatic show


HP-A4BLだとLaylaが聴けないので、ここからはmicro idsd BLで聞いていきます

まずT60RPですが、やはり非常にクリアというか、イヤモニっぽい正確で制動された鳴り方に聞こえます。しかし音が近いとか狭いとかそういう感覚はなく、空間は広めだけど音像が大きいという感じです。やはり素晴らしくカラっとしたサウンドだと感じます。

ただ、硬いハイハットの音色が少し主張しすぎて、シャリシャリと耳に痛い感じもあります。もう少しフォーカスを甘くして、解像度も細かくしてくれた方が、聞きやすく伸びやかな音色に感じると思いました。

次にLaylaですが、やはり非常に似たサウンドだと感じました。Laylaが中低域寄りだとしたら、T60RPはそこから低域を抜いて高域をカラッと開放感に降った感じでしょうか。

全体的な音のクリアさはT60RPが上で、中低域の濃さ、音の粒の大きさはLaylaが上という感じです。しかし、T60RPは上でも書いたようにハイハットの鳴りが少し刺さって聞き疲れしますね。

micro idsd BLのXBassで低域を持ち上げると刺さりはマシになりますが、それでもやはり少し高域が刺さります。そもそもの音色が硬いのでどうしようもありません。高域が高解像度とか伸びるとかいう訳ではなく、やたら硬いのに主張が激しいのです。ここは少しピーキーというか、値段相応な気がします。

しかしLaylaはLaylaで、T60RPと比較すると籠ったようなウォームなサウンドに聞こえますから、一長一短という感じでしょうか。

Laylaの低域調整ダイアルを最低まで下げると、沈み込むような分厚い低音が晴れて少し籠ったT60RPっぽい音になりました。もちろんハイハットの解像度がT60RPより上だったりと細かな点を見れば全然違いますが、全体的な音のイメージはかなり似ています。

次にT5P 2ndを聞いてみました。するとこちらはなんというか、ヴォーカルはクリアなのですが、その他の帯域がLaylaと同じように篭って聞こえました。

ヴォーカルがクリアな分全体的なイメージはLaylaほど篭って見えませんが、ギターの音色やドラムの音を聞くと、明らかにT60RPと比較して篭った音色に聞こえます。

サビの複数人歌唱は比較にもなりません。T60RPと比較すると、明らかに分離の悪い輪郭のぼやけたサウンドです。
また低域が薄いので、篭っているのに低音が出ていない不思議な音色に感じました。

もちろん空間の自然さやハイハットの音色の分解能はT5P 2ndの方が遥かに上ですが、音の正確さやクリアさは確実にT60RPの方が上です。私はT60RPが一番好みですね。



・Lynch. Phoenix



T60RPは、やはり非常にカラっとした見通しのいい、それでいて迫力不足とか浮ついた感じのないとてもいいサウンドだと思います。

音はソリッドで、全ての音を聞き漏らすことが無いような分離と定位の非常にいいサウンドです。全ての帯域がきちっと描写されており、見通しがとてもクリアです。

次にLaylaですが、やはり低域が非常に強く、音の質感は似ています。しかし、この曲ではこれまでのように音の曇りというものがあまり感じられないので驚きました。というかヴォーカルに関してはT60RPより響きが自然な感じもあります。

ギターの音色とか、ベースの音色とかの解像度という点ではT60RPが圧勝でしょうが、ヴォーカルの自然さと音の濃さではLaylaにはまるで及びません。Laylaはこういうラウドロックに非常に合っていると思います。

比較するとT60RPは浮ついたというか、なんというかクリアすぎてデジタル臭い不自然な響きです。また音の輪郭がハッキリとしていて低音がそこまで出ていないのに音が硬いので、余計に不自然というか聞き疲れしそうなサウンドと感じました。

次にT5P 2ndですが、これはLunatic showと同じ感じがします。ギターの音の輪郭がまじり会うことで、T60RPと比較すると篭ったサウンドに聞こえてしまいます。

ヴォーカルはT60RPよりは自然でクリアですが、やはり低域が薄いからか音の不自然さというものが拭えません。もう少し低域があればギターの音色の篭りもマシに感じるのにな、なんて思いました。

Laylaはライブハウスでスピーカーの前で大音圧に体が圧倒されているような、非常に臨場感と迫力のあるサウンドです。それでいてこの曲ではヴォーカルの質感が3機種の中で1番クリアというか滑らかなので、私はLaylaが一番好きですね。時点がT60RPです。

もちろんLaylaも完璧とは言えず、もう少し音が開放的ならもっといいんだろうな、という気はしますが。



・聖飢魔II EL:DORADO


T60RPはやはり非常にクリアというか、音の輪郭がとても正確なサウンドだと感じます。どんな曲でも一貫して音がクリアなので、どんな曲を聴いても高い品質で鳴らしてくれる優等生だと思いますね。

しかし、やはりハイハットの音色があまり伸びず硬いです。T5P 2ndの煌びやかに味付けされたキメ細かな音と比較すると、解像度というか分解能が低く感じ、物足りなさを感じてしまいます。

しかしそれを除けば、というかそれを差し置いても非常にクリアで透明感のあるサウンドです。
ギターソロもT5P 2ndのように感動するような艶っぽさや伸びはありませんが、音の正確性、定位の良さは驚異的です。立ち上がりから減衰までが驚く程に早く、正確な音色だと感じました。

また低音の輪郭もハッキリしており、余計な音がないのでベースの音色がとても鮮明に聞こえます。聖飢魔IIのベースはあまり主張の激しい方ではなく、まさに縁の下の力持ちという感じなのですが、このヘッドホンはそこまで明確にビタっと描写します。比較するとT5P 2ndはそこまで細かくは描写できておらず、他の音と混じって下の方を支えていると言った感じです。
(聞こえない訳ではなく、輪郭が他の音と調和しているので音を掴むのに少し手間取ります)

T5P 2ndは、やはり音の艶やかさが別次元です。ヴォーカルは少し籠ったような印象も受けてしまいますが、ホールのような伸びやかな感じです。
(因みにこの曲はT5P 2ndで3D+をONにすると、ヴォーカルが非常に伸びやかかつクリアな艶っぽい音色になって面白いのですが、今回の比較ではoffにしています)

またT5P 2ndはやはり空間を伝う自然な空気感の再現性が秀でており、圧倒されるような感覚があります。音の輪郭の正確さ、分離の良さはT60RPが圧倒的なのですが、T5P 2ndと比較すると音場の再現性は低く感じますね。

また、T5P 2ndはギターソロが驚異的なまでに素晴らしいです。音の伸び、艶やかさが別次元で、ここを比較するとT60RPが遥かにのっぺりとしたつまらないサウンドに聞こえてしまいます。ただ響いているだけではない、非常に上手いバランスの味付けだと思いました。

次にLaylaですが、こちらはヴォーカルはT5P 2ndより少しだけクリアで、そこに低域のふくよかさが追加されたようなサウンドです。

もちろんスネアの鳴り方などは少し籠ったような感じもありますが、低域の独特の質感が特殊だと感じます。
どデカいスピーカーの振動を体で直で受けているような、ライブ感とでもいうのでしょうか。T5P 2ndの自然な空間の描写ともまた違う面白い感覚ですね。

ギターソロの艶やかさはT5P 2ndには及びませんが、T60RPよりは上だと思います。もちろんT60RPは立ち上がりから減衰までが恐ろしい程に早いので好みの差ではあるのですが、私の場合は泣きのギターソロには艶や伸びのようなものが欲しいので、その点でLaylaやT5P 2ndの方が好印象に思えました。



・O-Ku-Ri-Mo-No Sunday!


T60RPは、やはり非常にクリアで素直な鳴り方です。それでいて低域の量感もしっかりとしているので、アタック感も申し分ありません。やはりとても素直で見晴らしのいい快晴のようなサウンドです。

比較してLaylaはやはりほんの少し籠ったようなサウンドで、低域がブーミー気味で太いサウンドです。全体的な質感は似ていますが、私はT60RPの方が明らかに好みです。

そしてT5P 2ndですが、こちらはやはり音の響きが豊かです。音の鳴らし方がまるで違いますし、また空間の奥行をメリハリ良く表現する能力はやはりとても高いと感じます。

特筆すべき点として、ヴォーカルの輪郭が淡くぼやけて膨らんでおり、空間の響きというものを強く感じるサウンドなのですが、音場が広いのにヴォーカルが近いという不思議な音を鳴らします。何故なのかはわかりませんが、これが私がこのヘッドホンを大好きな理由です。
広い空間から美味しい部分をグッと押し出してくれるので、1曲聞くだけで圧倒されてしまいます。

しかし低音はやはり弱めです。ノリの良さを感じるのであれば、T5P 2ndは上の2機種にまるで及びません。

この曲は、T5P 2ndとT60RPで好みの差という感じでしょうか、他の曲みたいに明らかな差が出ません。

制動された音のT60RP、響の艶やかなT5P 2ndという感じです。Laylaはどっちつかずで籠ったようなサウンドなので最下位ですかね。







音の立ち上がりがとても早くモニター的。弱点は高域の解像度の甘さと艶のなさ


FOSTEX T60RPには、音の深み、艶とか美音っぽさは全くありません。しかし響きの制動性や分離感、立ち上がりから減衰までの速さなど、カチッとしたモニターらしい音の粒の改造感はそれこそハイエンドにも劣らない最強クラスのヘッドホンだと思いました。

また低音も比較的しっかりとしているので、非常にカラっとした抜けのいい音ながら、パワーのなさや線の細さを感じさせない絶妙なバランスに仕上がっています。

音場は広くは無いですが、定位が非常に良好で見通しが良くカラっとしたサウンドで狭さを全く感じさせません。

個人的にはLayla Universal fitの音をクリアにして、高音域を固くしたようなサウンドだと感じました。高音の質感の硬さは解像度不足ということで値段相応だと感じましたが、その他の帯域の音のクリアさではLayla Universal fitを遥かに凌駕していると思います。

他にも音の制動性や抜けの良さという点では、ハイエンドヘッドホンのT5P 2ndを完全に上回っています。特に中音域のカラっとした見通しのいいサウンドは驚異的で、これを聞いた後にT5P 2ndを聞くとギターなどの中音域の空間がぼやけて籠ったようなサウンドに聞こえることすらありました。

定位や分離の正確さ、キレの良さを求めるのなら、このヘッドホンは充分過ぎるほどにハイエンドに匹敵するクオリティだと感じました。
ここまでクリアかつ全帯域が正確な音というのはなかなか聞けないと思います。

ただ弱点らしい弱点はほぼ見当たらないのですが、どうしても音が正確すぎて伸びや艶っぽさ、中低域の空気感の再現性などはほとんど感じませんでした。その辺の息を飲むような美しく芸術的な音色を求めるのなら、このヘッドホンは役に立たないでしょう。

響きの美しさとか、音場の再現性とか、そういう濃い味付けを求めるのであれば、このヘッドホンは値段相応か値段の割にはいい、という評価に落ち着くと思います。

また全帯域が優秀なT60RPですが、高域の解像度はそこまで高くもなく、ハイハットなどの金物の鳴りは固くエッジが荒っぽく思えます。俗に煌びやかな音などと称されるような、きめ細やかな高域の分解能が不足していると感じました。





どんな曲でも一貫して高音質になる、優等生の万能ヘッドホン


総評ですが、FOSTEX T60RPはクセらしいクセが存在せず、立ち上がりから減衰まで音源の情報をただ正確に描き出し、どんな楽曲でも総合的に80点台を叩き出す超優等生ヘッドホン。そんな機種だと思いました。

こう書くと無難な感じですが、こういう味付けのない単純なクオリティの高さというのはそうそう簡単に実現できるものではありません。ハイエンド並みという評価もあながち嘘では無いと思います。
弱みがないので、これ1本持っておけばどんな曲にも対応できる万能機です。



ちなみに今回のレビューのあと、いろいろこのヘッドホンで音楽を聞いたのですが、特に素晴らしかったのがこの曲です。



このヘッドホンの定位と分離の良さは上でも触れましたが、この曲では他の一般的な音作りの機種との格の違いを遺憾無く見せつけてきます。

具体的に言うと音の輪郭が全くぼやける事がなく、ヴォーカルの混じりというものが誇張無しに全くないのです。多人数ヴォーカルなのですが、どこから音が鳴っているのか常に明瞭で、また音数が増えたりしても音が重なったり音像の位置が揺るぐことは全くありません。

これはもはや解像度とかそういう次元で語れるレベルを超えています。この音がたった1枚のドライバーから出ているというのが信じられないレベルです。

ここまで分離と定位が良すぎると、むしろ不自然だと感じる人がいても何らおかしくないでしょう。空間の響きというものを全く感じず、ただただ各々の定位置から発せられた音が空間で全く混じることなく耳に直接届いている感じです。またヘッドホンなので、多ドラのIEMなどとは違いそもそもの空間が広く、音の位置が明瞭でも音場は全く狭く感じないというのがこのヘッドホンが異常なポイントでしょうか。

もちろん上でも書いたように音の艶っぽさとか響の美しさとかはほとんどないので、既に万能な機種を所有している人であれば「確かに凄いんだけどここまでされると……」と感じてもおかしくないとは思います。しかし、それを差し引いてもこの異常な音は1度くらいは聞いて欲しいと思いました。








ifi audioのXBassは優秀


ちなみに今回使用したmicro idsd BLというポタアンには、XBassという低音増幅機能が付いています。

micro iDSD開発(21)スーパー・デューパー仕様2.0

この記事は、micro iDSDの発売を控えたiFIのテクニカル・チームがHead-FIやFaceBookに掲載しているものです。 以下は6月22日の投稿------------ http://www.head-fi.org/t/711217/idsd-micro-cro...



これがなかなか優秀で、聞こえるか聞こえないかギリギリの超低音を持ち上げてくれるので、楽器だったり、ヴォーカルの音色だったりは全く変化なく、空気を震わすような低域のみが付与されます。

なのでイコライザーを弄ったように低音が強くなった!とは感じず、全体像は変わらないのに響きに芯が通ってリアルな空間の振動を感じられるようになります。





もちろん低音を足していることには変わらないので元々の低音がはっきりとしている機種では過剰に感じますが、高域は綺麗なのに低音の量感が物足りなくて軽く感じる、という機種にはかなりベストマッチします。
(例えば私は普段T5P 2ndを常にこの機能をONにして聞いています。その方が明らかに好みの音です)

この機能はなかなかに汎用性が高く、また明確に変化を感じられるので、高価なリケーブルやアンプの買い替えなどの微妙なカスタマイズを行うよりは断然効果的で確実だと思います。今回レビューしたT60RPも、XBassをかけるとまた違った音の深みが出て心地よい音色になりました。

XBassはifi audio社のアンプ類に搭載されているので、ひとつは持っておくと便利ですよ。







安すぎるくらいのコスパモンスター。Balance Packはとにかくオススメ


3万円のヘッドホンということで到着するまでに少しだけ不安もあったのですが、それを一瞬で打ち砕くような凄いヘッドホンでした。鳴らしにくいので誰にでもおすすめできる訳では無いですが、それなりのアンプを持っているのであれば値段も安いのでとりあえず一本買うと良いと思います。



価格:48664円
(価格は2021年2月13日 12時00分の情報です)

ちなみにAmazonのセットは台数限定販売で在庫も無くなってしまいましたが、入荷予定があるのでまだまだ数はあるのだと思います。これから高級な機種に手を出してみようかな、なんて思っている人は、変に癖の強い機種を買ってスパイラルにハマるよりもこのセットを買った方が安価に万能に楽しめると思いますよ。

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