イヤホンやヘッドホンのスペックの見方と比較方法。音質とはほとんど関係なし

♨の人

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新しいイヤホンが欲しいけれど、イヤホンのスペックの見方が分からない、という人は多いと思います。

というわけで今回は、イヤホンのスペックの見方と、それが如何に音質と無関係であるかをバッサリと書いていきたいと思います。



再生周波数帯域、ハイレゾ対応←音質に何の関係もなし


イヤホンのスペックに再生周波数帯域というものがあります。
大体は20Hz-20,000Hzで、最近は40kHzあたりが上限となっているものが多いです。

これが高いと高音が綺麗に出る、スペックが高いと勘違いしている人が非常に多いのですが、それは大きな間違いです。

これはメーカーがテストする際にどのくらいの音まで出せるのか測った範囲でしかないので、上限が20kHzでもそこから上の音が出せないという訳ではありません。例えばShureなんかは最新作のAONIC4でも再生周波数帯域は18Hz~19kHzですが、これはそもそも測る必要が無いから測っていないだけで、実際に測れば余裕で40kHzまでスペックを引き上げることが出来るでしょう。


人間の可聴域は上限20kHzです。またこれは上限の話であり、20代前半のような若い人でも大抵の人は16~18kHzが限界でしょう。私も相当頑張って18.5kHzまでしか聞き取れません。20kHz聞こえるとなると超人レベルでしょう。

再生周波数帯域が広いか狭いか、ハイレゾ対応か否かは音質に全く関係ありません。上にも書いたようにハイレゾ対応というのはあくまでテストの際に超高周波まで測ったかどうかでしかありません。

そもそもハイレゾ音源が高音質なのは聞こえない高周波が含まれているからではなく、まず第一にマスタリングの違いがあり、その次にbit深度の違いが上げられます。デジタルの段階ではハイレゾ音源に対応しているかどうかが重要となりますが、アナログ出力された先でのイヤホンやヘッドホンにハイレゾ対応などちゃんちゃらおかしい話です。

一応100kHzを再生できると謳うIER-Z1Rみたいな製品もあるにはありますが、いつものSONYの悪癖みたいなもんです。高周波が再生できるかどうかは音質と全く関係ないですし、ハイレゾ非対応のイヤホンでもハイレゾ音源はなんの問題もなく再生できるので騙されないようにしましょう。






ドライバーの数と音質は直接的な関係ない


イヤホンのドライバー(音を出す部分)には、大きく分けてダイナミック型、バランスド・アーマチュア型(BA型)、コンデンサー型、エレクトロスタティック型(静電型)という種類が存在します。
(Audezeの平面駆動方やSTAXの静電型、Finalのトゥルーベリリウムドライバなんかは特殊すぎるので省きます)

とりあえずコンデンサー型とエレクトロスタティック型は1部の超高級機にしか搭載されないような特殊なものなので除外します。
(最近中華イヤホンメーカーから静電型搭載で5万円程度の商品が販売されました)


ダイナミック型とBA型の音の違いは、一般的にこんな感じです。

【ダイナミックドライバー】
・円形状のダイアフラムをボイスコイルで振動させる、スピーカーとよく似た方式のドライバー。
・低音や超高音など様々な帯域を一つのドライバーで再生できる。ただし多くの場合帯域バランスはどちらかに偏る。
・大型ドライバによる低音や小型ドライバによる超高音を出しやすい。
・帯域ごとの繋がりが良く、定位や音場再現に優れる。
・安いイヤホンは基本的に全てダイナミックドライバー。


【バランスド・アーマチュアドライバ】
・イヤホンの他に補聴器などにも使用される、金属の箱から筒が出た小型のドライバー。
・繊細でクリアな音を出せる代わりに担当できる帯域が狭い。高級機ではそれを克服するため複数のドライバーを搭載したりする。
・大手メーカーの搭載機は最低でも1万円はする。相場はシングルBAで2万円ほど。


同価格帯のシングルBA機とダイナミック型を比較すると、だいたい上の表みたいな差を感じられることでしょう。

しかし、高級機になってくるとBAドライバを複数搭載した多ドラがメインとなってきます。
多ドラにする理由は上にも書いたようにBA型の再生周波数帯域の狭さや歪みの多さをそれぞれ分けることで補うためです。

しかし、勘違いしている人もたまに居るのですが、ドライバーの数が増えれば増えるだけ高音質になるという訳ではありません。
多ドライヤホンが多ドラである理由はあくまでもメーカーが目指す音に近づけるため試行錯誤した結果ですので、12BAだろうが4BAだろうが聞いてみるまでどちらが自分の好みに合うかは判別できないでしょうし、ドライバーの数で優劣を語るなど具の骨頂です。

もっと言うと、多ドラにすればするほどクロスオーバーや僅かな音のズレで位相が狂いやすいので、とりあえずスペックを大袈裟にするために大量のドライバを詰め込んだはいいものの、その辺の調整をするほどの技術力のないメーカーのイヤホンは想像からはちょっと外れたピーキーなサウンドになりがちです。定位が狂ったりとか、低音だけ遅れて聞こえたりとか、特定の帯域のみ前に迫り出したかのような違和感のある音になったりするのが代表的な所でしょうか。
その辺は過去にダイナミック1発のKS1と、ハイブリッド型のSE01を比較した際に露骨に差として現れました。


また、ドライバーの数を気にしなくていい理由については過去記事にて既に詳しく書いてあるのでそちらをご覧ください。


因みにヘッドホンの場合は基本的にはダイナミックドライバーなので、イヤホンのようにやれBAが何個搭載とかそういう観点で語られることは少ないです。

しかし一口にダイナミックドライバーと言っても、実際はメーカーによって様々な試行錯誤が成されており、それを製品のアピールポイントとして使っているメーカーも多いです。

例えばHD800のリングラジエータだとかbeyerdynamicのテスラドライバーが当てはまりますね。それらを傾けて配置するか、耳と平行に配置するかなんかでも音は変わります。

ただ、そういうギミックだとか材質の差は音に直接的な関係はあるのですが、恐らく実際に聞くまでは見ても何も分かりません。さらに言うとこの部分はマニアが音を聞いた上でメーカーについてあれこれ想像して楽しむというレベルのものです。

なのでそこまでマニアじゃない普通の人なら、まずなんの参考にもならないので気にしなくて大丈夫です。気にするのはせいぜい駆動方式の違いだけでいいでしょう。例えば再生機器がパソコンとかスマホなのにFOSTEXとかHiFiMANの平面駆動方を買うのは絶対にやめた方がいいです。





ドライバー口径←ほとんど関係なし


一般的な話として、ダイナミックドライバーは大きい方が高音質だと言われています。口径が大きいほど押し出せる空気の量が増えるので、低音の再現性などが高くなるということです。

しかし、ぶっちゃけた話イヤホンやヘッドホンの音というのはドライバーだけで決まるものでは無いので、私は気にしたことはありませんしドライバー口径と音質は殆ど関係ないとすら思っています。

例えば、初めて聞いた時あまりの凄さに驚いた「SENNHEISER IE800S」というイヤホンがあります。
このイヤホンはとても有名な高級ダイナミックドライバーイヤホンなのですが、ドライバー口径は何ら変哲のない7mmです。
オーテクによるとカナル型ダイナミックイヤホンの一般的なドライバー口径は8.8~12.5との事なので、IE800Sはかなり小さめのドライバーを搭載していると言えます。しかし、音は数あるダイナミック型イヤホンの中でもトップクラスの逸品です。

ダイナミック型イヤホンの高級機を他に上げるとすると、JVC VictorのFW10000は11mm、AK T9iEは11mm、テクニクス EAH-TZ700が10mmです。

この中でIE800Sはドライバー口径が1番小さいから、音もいちばんショボイ。そんなことあるはずが無いでしょう。
この時点でドライバー口径なんてあまりあてにならないことが分かるでしょう。

ヘッドホンに関してもドライバー口径を気にしたことはありません。AirPods MAXは50mmドライバーだからSONY WH1000XM4より高音質、とかトンチンカンなこと言ってTwitterで叩かれてる記事を見かけたことがありますが、ドライバー口径で音質は決まりませんからね。しかもAirPods MAXは40mmだし。

上で書いたことと同じ流れになりますが、MDR-Z1Rは70mmドライバーだから50mmのFOSTEX TH900や53mmのAKG K812より高音質、なんて言ってたら鼻で笑われますよ。

安価な製品ならこの法則もある程度当てはまるのかもしれませんが、TWSで音質が最強と言われてるSENNHEISER MOMENTUM True Wireless 2は7mmドライバーですし正直どうでもいいと思います。

他にも低価格イヤホンの最強格、FinalのE3000は6mmというとても小さなドライバを採用していますが、音質は評判に現れる通りです。


さらに言うとダイナミックドライバーは振動板を大きくすれば性能がアップするのは事実なのですが、大きくなれば当然重くなってしまうので、駆動することが難しく、細かな音の再現や音の立ち上がりに悪影響を及ぼします。

じゃあ薄く軽くすればいいのかというとそうではなく、今度は逆にドライバーの捻れなどが生じて制御が難しくなります。

そしてそのドライバーから出た音をイヤーパッド内でどのように反響させるか、ハウジングの共鳴をどれだけ残すか……そういう部分をメーカーは独自に試行錯誤してヘッドホンやイヤホンを作っています。ドライバー口径の大きい、小さいはそのメーカーがそれが最良だと判断したサイズとなっているので、私たちがカタログスペックだけを見てもなんの参考にもならないでしょう。

それでもドライバー口径が大きい方がいい、と言うなら、SONY MDR-Z1RとXBA-Z5がオススメです。もしくはSTAXとかの静電型、Audeze、HiFiMANなんかの平面駆動方がいいでしょう。






銀線、無酸素銅、金メッキ。線材やメッキ材質による音質の差はデータのないオカルト


3芯か4芯か、プラグが金メッキか非メッキかくらいなら音質には差が出ますが、それ以上となると基本的にはオカルトの領域だと思ってもらって構いません。とくに16芯OFC銀メッキクライオ処理で電装ロスが~みたいなのは全てオカルトです。何故ならデータが存在しないので。

この辺についてはもう過去の記事で散々書いたのでそちらをご覧ください。


ただ、ケーブルにより音が変化するのは事実ですし、ケーブルの柔らかさとかはタッチノイズや取り回しに影響するのでその辺はよく見ておくといいでしょう。







インピーダンスや能率は音質に関係なし


イヤホンやヘッドホンにおけるインピーダンスとはいわゆる交流抵抗の事です。この数値が低ければ音量が出しやすく、高ければ音量が出にくい、というのが一般的な説明です。
出力音圧レベルや能率、感度は電力を与えた時にどのくらいの音が出るか、というものです。

勿論このインピーダンスや能率も音質に直接的な関係は無いので、気にするべきは使用する機器に対してインピーダンスが高すぎないかどうかだけで問題ありません。例えばスマートフォンやパソコンで使用するのに、300ΩのHD800とか600ΩのT1 2ndなんかを購入した場合は電圧不足で音が極端に小さくなってしまうでしょう。
32Ω程度がスマートフォンなどの低出力な機器で使える上限と思っておけばいいです。能率に関しても、低すぎなければ基本的には問題ありません。
(例えインピーダンスが高く能率が低くても、高出力なアンプさえあれば普通に駆動できるので私は気にしたことは無いです。私が使用しているのがmicro idsd BLだからというのもあると思いますが……)

ただ、イヤホンやヘッドホンのインピーダンスというのはある帯域の信号を再生した際に流れる電流を測って計算した数字です。なので、BAドライバを沢山搭載したイヤホンなどでは表示されているインピーダンスはあまりアテになりません。
なのでインピーダンスが低いから大丈夫だろう、と高級なマルチBAイヤホンなんかをスマホなどで使うと、特定の帯域で電圧が不足したり電流が不足したりして結果として本来の音が出せなくなることがあります。
(私の持ってる中だと12ドライバーのLayla Universal fitはスマホだと本当に酷い音になります)

そういうイヤホンを使いたいのなら、それ相応の出力を持ったアンプやDAPを購入しましょう。


また、出力インピーダンスの高いハイパワーなヘッドホン用のアンプに好感度なイヤホンを接続すると音が劣化してしまいます。また出力インピーダンスが低くともゲインが高すぎて音量を上げられずギャングエラーに悩まされる、なんてこともあるでしょう。
据え置きアンプだからDAPより高音質、と思考停止するのではなく、そのへんもきちんと調べることをオススメします。






カナル型とインナーイヤー型の違い


最近のイヤホンはほぼカナル型なので気にしなくて大丈夫です。インナーイヤー型が欲しいなら安価なものだとEarPodsくらいしかまともな選択肢は無いのではないでしょうか。

一応それなりのお金を出せばaudio-technica ATH-CM2000Ti、NICEHCK EBX21みたいなものもありますが……


あと一応平面駆動型イヤホンというのもありますが、かなりピーキーな代物なので素人がを出すようなものでは無いです。


もちろんSTAXの静電型イヤホンも同じく玄人向けです。


あとはFinalのPiano Forteシリーズもそうですかね。


注意すべきはカナル型イヤホンでも、機種によりノズル、ステムなどと呼ばれるイヤーピースを装着し耳に挿入する部分の長さや太さが違うことです。なので機種によりイヤーピースや耳との相性が露骨に出ます。この辺は試聴するしかありませんが……

イヤーピースは音質に非常に影響を与えるものです。イヤホンを買ったら、とりあえず付属しているものを全て使ってみることをおすすめします。




開放型と密閉型の違い


開放型っぽいサウンド、密閉型っぽいサウンドというのは存在します。しかし、開放型っぽい密閉型もあれば密閉型っぽい開放型も存在します。他にも開放型と書いてあっても実際はセミオープンに近い設計だったり、開放型でもどの帯域を外に逃がしているかとか色々違いがあるのでやはり密閉だからどうとか開放がどうとかは一概には言えません。

一般的には密閉型は低音が得意で濃いサウンド、開放型はスッキリした高解像度なサウンドと言われていますね。




結論。イヤホンやヘッドホンのスペックは音質と関係なし。視聴しよう


結論ですが、イヤホンやヘッドホンの音をスペックだけで見るのは具の骨頂です。ちゃんと音を聞くまで評価はできません。

ちょっと大きめの家電量販店なんかだと普通に色んなイヤホン・ヘッドホンを視聴できますし、ヨドバシカメラやEイヤホンなんかの専門的な店舗なら何十万もするような高級イヤホンや珍しい海外のイヤホンだって普通に視聴できます。

とりあえず聞いてみて気に入ったものを買う。それが一番賢く、失敗のない方法だと思いますよ。

それでは、以上です。

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