カスタムIEMのメリット、デメリットについて語る。音質やコスパなどユニバーサルとどっちがいい?

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高級イヤホンのひとつの到達点として語られることの多い、カスタムIEM(インイヤーモニター)。

本記事ではそんなカスタムIEMのメリット、デメリットについて書いていきたいと思います。



カスタムIEMとは?


カスタムIEMとは、その名の通り自分の耳型を取り、耳ぴったりに作ったオーダーメイドイヤホンのことを指します。歌番組などで歌手が耳に何かを付けているのを見た事があるかもしれませんが、あれがそうです。

そんなカスタムIEMを最初に開発したのは、Ultimate Earsを設立し、その後にJH Audioを設立したジェリー・ハービー氏です。彼はヴァン・ヘイレンのサウンドエンジニアだったのですが、同バンドドラマーのアレックス・ヴァン・ヘイレンから、耳を守るためにそれまでのモニタースピーカーに変わる何かを頼まれます。そこで開発されたのが、個人の耳の形に合わせ遮音性を高めたカスタムIEMです。
(そんな経歴から、彼はイヤモニの神、なんて呼ばれたりもしています)

21世紀になるとカスタムIEMの需要は大きくなり、今ではプロのミュージシャンの仕事道具として当たり前のようなものとなりました。

「音の分離がよく、音圧による密閉感が減り、額の前後に音の色彩が広がるような感覚。」 鈴華ゆう子 meets 64AUDIO A6t

「和楽器バンド」でボーカリストをつとめる鈴華ゆう子さんに、64 audioのインイヤーモニター導入のきっかけお伺いしてみました。



そんなカスタムIEMは本来はミュージシャンがステージ上にて音をモニターするためのものなのですが、今では一般の方でも気軽にカスタムIEMを作れるようになり、また音質に拘ったコンシューマー向けのモデルも増えたので、今ではカスタムIEMはマニアの間では当たり前のようなものとなりました。






カスタムIEMのメリット 遮音性・フィット感が高い


カスタムIEMの最大のメリットは、そのフィット感の良さと遮音性の高さです。自分の耳型と全く同じ形で作る訳ですから、シリコンイヤーピースの反発力で保持するユニバーサルイヤホンとはまるで別次元のフィット感と遮音性を得られます。

例えばLOUDNESSの二井原実氏は、「ユニバーサルIEMは3曲程度で汗と口の動きでズレてしまうのに対し、カスタムIEMのUE5は全く問題なく最後までしっかりフィットを保ってくれた」と語っています。

因みにカスタムIEMの遮音性の高さが一番生きるのは、バスや電車などの騒音の激しい場所での利用です。ほぼ音の鳴る耳栓なので外部の騒音をかなりカットできますし、遮音性が高いということは騒音下でもいい音質を維持しやすいです。
一般的に外部の騒音レベルが高くなるほど、音の細部が騒音でかき消されるので音質は低下します。せっかくの高級イヤホンでも遮音性が低ければ外では役に立たないので、通勤時などに音楽を聴く人にはカスタムIEMは非常にオススメです。

ただ、低音域の遮音性はノイズキャンセリングにはやはり劣ってしまいます。あまりにもうるさい場所ではやはりノイズキャンセリングイヤホンに軍配が上がってしまいますね。





カスタムIEMのメリット 所有欲を満たしてくれる


遮音性やフィット感に勝るとも劣らないメリットがこちらです。

カスタムIEMは自分の耳型に合わせて作る、世界で一つだけのオーダーメイドイヤホンです。またデザインなどもある程度自由に決められるので、ユニバーサルイヤホンと比較して非常に所有欲を満たしてくれるはずです。見た目もキラキラとして透明感がありカッコイイですしね。




カスタムIEMのデメリット 高い


それではカスタムIEMのデメリットについてですが、まず真っ先に上がるのがこれでしょう。今ではかなり安いメーカーも出てきましたが、それでも10万円は用意しなければまともなものは手に入りません。音質に拘るのであれば20万円近くになる事だって決して珍しくないでしょう。

またカスタムIEMはその名の通りオーダーメイドなので、一般的に同価格のユニバーサルイヤホンと比較すると音質的には不利になりやすいです。ロット生産できるユニバーサルと違いひとつひとつ作る訳ですから当然ですね。





カスタムIEMのデメリット 売れない


人の耳の形は千差万別です。なのでカスタムIEMは基本的に持ち主以外にはまるでフィットしません。なのでカスタムIEMは何十万するような高価なモデルだとしても、本当に二束三文でしか売れません。
世の中にはリフィット前提や改造目当てで中古のカスタムIEMを購入する人もいるので、全くお金にならないということはありませんが、それでも購入価格の10分の1なんてのはザラです。
これもLOUDNESSの二井原実氏が、フィットしなければクソみたいな音質、とまで語っています。

これが同じドライバー構成のユニバーサルモデルなら、ものにもよりますがカスタムの2~3倍、もしくはそれ以上の値段で売れるでしょう。

イヤホンマニアというのは飽き性なのかイヤホンを売り買いすることが多いので、本当にそのイヤホン一本でやって行く、という覚悟がない方にはカスタムIEMはおすすめ出来ません。私なんかは絶対無理ですね。







カスタムIEMの誤解 音質がいい


イヤホンマニアの到達点のように語られることの多いカスタムIEMですが、実際のところそこらのカスタムIEMより音質のいいユニバーサルモデルは腐るほどあります。カスタムIEMの音質は、視聴用のユニバーサルモデルとほとんど同じと考えましょう。

ただ、この時気をつけなければならないのが視聴機の挿入深度です。イヤホンというのは挿入する深さにより外耳道共鳴のピークが変わるので、音質が変化してしまいます。僅かな差ではありますが、カスタムIEMを買うような人であれば決して無視することの出来ない部分でしょう。これのせいでカスタムの方が視聴機より更に音がいい、なんて誤解が生まれています。

原理についてはこの記事にて解説しています。


ちなみに原理的な話というのは取っ付きにくいので、今回はこんな画像を用意してみました。



1枚目が浅めの挿入で、2枚目が深く挿入した時の図です。これで音質に差が出ないわけがないですよね。
視聴機やユニバーサルモデルとカスタムの音質差を減らしたい場合は、イヤーピースをできる限り小さくして深く挿入するようにしてみてください。



ちなみにトリプルフランジの中でもトップクラスに細長いShureのトリプルフランジは多分こんな感じです。

音導管をシリコンのイヤピで延長してるみたいなもんなのでレジンシェルのカスタムIEMとは音質とかはまた少し違ってくるのでしょうが、挿入深度だけ見ればカスタムに一番近しいんじゃないかと思います。






カスタムIEMのデメリット 成長期や体型の変化に敏感


人間は成長したり、体型が変わったりした場合耳の穴の形が変わることがあります。そうすると、耳穴ぴったりに作ったカスタムIEMでも次第にフィット感が変わってしまう事があります。

ユニバーサルモデルは反発力のあるイヤピで保持しているだけなのでその辺は意外とルーズですが、カスタムは本当に耳の穴の形そのままに作るので影響が出やすいことは想像に難くありません。キツくなった場合は装着感の悪化ですみますが、もし隙間ができた場合は低音の抜けたスカスカな音になってしまうでしょう。その場合は有償でのリシェルが必要になります。







カスタムIEMのトラブル。耳に合わない


カスタムIEMがやっと届いて、意気揚々と装着してみたけど何故かスカスカ、またはキツい。そんなこともよくあるようです。

そういう場合、リシェルをオーダーしましょう。レジンを盛ったり、または削ったりして、自分の耳に合うように再調整してくれます。

人間の耳穴というのは日によって浮腫や腫れなどにより微妙に大きさが変わりますし、また口を開けているか、閉じているか、顎に力を入れているかなどでも形が変化します。カスタムIEMを作る際は、そういうことも考慮して耳形を取るなり、その辺のサポートがしっかりしているメーカーを選びましょう。レスポンスの速さだけなら国内メーカーが最強ですね。





気に入ったイヤホンをカスタムIEMにしたい。そんな人はリモールドしよう


気に入ったイヤホンがあり、これをカスタムにしたい。そんな人のためにリモールドという手段があります。

これはユニバーサルイヤホンのシェルを破壊し、内部のドライバーを新たに耳形通りに作ったレジンシェルに埋め込みカスタムIEM化するという手法です。

基本的な設計を守ったBA型IEMなら、リモールドしてもあまり音質に変化は出ないので、気に入ったイヤホンの音をそのままカスタムにできます。
(ビニールチューブの音道管を使用している場合)

因みにDDドライバー搭載モデルは基本的に無理なので諦めてください。

また金属などの特殊なシェルを持つモデルや、あまりにも搭載ドライバーの数が多いモデル、もしくはアコースティックチャンバーなどを使用している最近の高級モデルも基本的にリモールドは難しいでしょう。





あとがき。カスタムIEMはメリットばかりじゃない


あとがきです。この記事で解説したように、カスタムIEMというのはメリットばかりではありません。

高価なものですから、そういう部分も深く考えてユニバーサルモデルと比較してみてください。

それでは、以上です。

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