STAX SRS-002+SRM-002の音質をレビュー。スタックスの静電型(コンデンサー型)カナル型イヤホン
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なぜこのイヤホンを購入したのか
この機種に出会ったのは、私の所有機種とまるで被らない新たなイヤホンを捜し求めていた際。EMPIREやUnique Melody、kinera imperialなど、色々なメーカーのイヤホンを視聴して、どれもいまいち決め手に欠けると思っていた時に、ふと目に止まったこの機種を視聴したことから始まりました。
STAXというとコンデンサー型ヘッドホンでとても有名なメーカーであり、このSRS-002も存在自体は知っていました。しかし、実際視聴したことはなく、本体価格が4~5万円程度と安価なこともあり真面目に視聴しようと思ったことはありませんでした。
ということで視聴してみた結果、度肝を抜かれ購入に至ったというわけです。
見た目は安っぽい。電池はリチウムイオンがオススメ
ということで外観のレビューに入ります。

外箱はこんな感じです。高級感はありませんが、安っぽさも感じさせない絶妙なラインですね。ちなみに大きさとしてはかなり大きく、薄いダンボール製の箱になっています。

中にはスポンジに収められたアンプと、イヤホン本体、そしてイヤーピースやAUXケーブル、ヘッドバンドなどの付属品が収められています。なんとなくプロ機器っぽい佇まいです。

そしてこれが本体です。実物は非常に安っぽく、これが業界でもトップクラスのコンデンサー型イヤホンだなんてまるで思えない見た目です。なんとなく昔流行った耳かけ方のヘッドホンを彷彿とさせますね。

実物はとても軽く、プラスチックの処理などもおそまつと言わざるを得ないようなクオリティです。これならそこら辺で売っている数千円のヘッドホンの方がまだビルドクオリティは高いでしょう。ケーブルもシナッシナで、すぐにちぎれてしまいそうです。しかし、これで音がいいのだからなんとも言えません。

ヘッドバンドを装着するとこんな感じです。私はこのパーツは使いませんでした。

アンプのSRM-002です。大きさとしてはだいたい10000mAhのモバイルバッテリーより少し大きいくらいの感じですね。とても軽く、これもゲーセンのおもちゃのラジコンのコントローラーのような質感です。

裏面はこんな感じ。このアンプは単三電池で駆動します。公称はエコモードで5時間以上、ノーマルモードで4時間以上ということで、燃費はよくありません。ただ、内蔵バッテリー式では無いことでバッテリーの劣化を気にしなくていいのはメリットと言えます。
ちなみに充電式のニッケル水素電池でも駆動しますが、ニッケル水素電池は公称電圧が1.2Vで、アルカリ電池の1.5Vより少しパワー不足です。それがどれだけ音質に影響するかはわかりませんが、音質以外でもバッテリーの持続時間が短くなるなどの影響が出てくるでしょう。充電池を使用するのであればリチウムイオン充電池をおすすめします。
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なお、特撮のおもちゃや機械のリモコンなどでよくあるのが電池の液漏れでの故障です。1週間とかなら特に問題は無いでしょうが、なるべく使わない時は電池を抜いていた方がいいでしょう。

ちなみに別売りのACアダプターで駆動することもできます。この場合は電源ノイズが乗る恐れがあるので、ノイズ的にはバッテリー駆動の方が音質的には優れているのでしょうかね。よくわかりませんが。
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因みに音漏れに関してはApple純正イヤホンを少し強めたような、シャリシャリとした音色が漏れ出ている感じでした。密閉型ヘッドホンのT5P 2ndと比較しても、こちらの方が音漏れが少ないくらいです。
ただ、遮音性は皆無に近いので外で使うことはまず無理でしょう。外の音がまるで何も遮音されず入ってきます。
このイヤホンでしか味わえない音がある。コンデンサー型イヤースピーカーは伊達じゃない
それでは、音質のレビューに入っていきたいと思います。

今回は、micro idsd BLの3.5mm出力から音声をアナログで転送し、AUXケーブルでSRM-002に繋いでいます。本当はRCAでライン接続するほうがいいのでしょうかね。その辺は個人の好みで行ってください。
ちなみにエコモードは少しくぐもったような音色になるため、出来ればノーマルモードで使用することをおすすめします。
・葉月 Phoenix
このイヤホンの音の特徴は、なんと言ってもその開放感と音の距離感の上手さです。
音場は広めで、特に低域で顕著なのですがまるでヘッドホンのような空間表現がなされており、音に詰まった印象を一切与えません。

例えばLayla Universal fitと比較すると、Laylaの場合はやはりどうしてもカナル型特有の反響のようなものを感じます。それにより、低音域にパンチはあるものの音の抜け感、透明感というのは損なわれてしまっています。音の響きが間延びしている感じです。LaylaからSRS-002にシームレスに付け替えてみると、あまりの透明感の変化に驚きます。
音の響き方の開放感は、beyerdynamic T5P 2ndとほぼ大差ありません。それくらい開放的で、イヤホンにしてはかなり広い音場を持っています。
T5P 2ndとSRS-002を比較してみると、T5P 2ndはボーカルがとても近く綺麗で、ティンパニの響きなどがハイ上がりでかなり切れ味のあるサウンドです。ただ、T5P 2ndはかなり味付けされた音色に感じてしまいます。
SRS-002の低音域は何も脚色されていないかのごとくとても滑らかで、耳に刺さる成分が全く出ていません。また、空間の開放感はやはり目を見張るものがあり、T5P 2ndの響きが間延びしているように感じられるほどです。
・アルルカン ラズルダズル
スタックスというと低音スカスカのクラシック老人向け、というイメージを持っている人も居るかもしれませんが、SRS-002に関しては意外と低音も出ているのでこういうラウド系サウンドも聞くことは出来ます。
しかし高音域はかなり主張が激しく、正直なところバランスとしてはあまり向いているとは思えません。それでも全く刺さりを感じさせないのは流石静電型と言った所でしょうか。
Campfire Audio ANDROMEDA 2020と比較すると、やはり鳴り方が根本的にカナル型イヤホンとは違うのだな、と実感します。まるで似ている点が見当たらないので、比較することになんの意味があるのか疑問になるほど違います。
具体的に何が違うかと言うと、音像の響き方です。ANDROMEDA含め一般的なカナル型イヤホンは音像が余計に響くことなく、制動されたスケール感の小さい鳴り方をします。
(IE800Sなどかなり音像の響き方が特殊なイヤホンもありますが)
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それと比較して、SRS-002は音像自体がかなり膨らんでいます。膨らむと言っても篭っている訳ではなく、どこまでも見透せるような透明感と開放感溢れるサウンドを両立しています。これが一般的なカナル型イヤホンとは全く異なる点です。
一般的なカナル型イヤホンは音場の広い狭いはあっても、あくまでも限られたスペースの中でどの音をどのくらい膨らませるか、という枠組みに縛られている気がします。その限界をこのイヤホンは完全にとっぱらって、音像を好きなだけ響かせることが実現出来ています。
低音域のアタックはこの曲ではかなりソリッドで粒立ちが良く、シャリっとしたドンシャリ好きにはこの音も好まれるのではないかと思います。
(例えばSENNHEISERとかが好きな人は、この音も気に入るはずです)
・あらかねの器
やはりこのイヤホンにはこういう歌モノがベストマッチします。空間表現の上手さ、音像の響きと艶感、そして圧倒的な開放感と透明感。これはこのイヤホンでなければ聞くことの出来ない音だと言えるでしょう。
T5P 2ndと比較すると、やはりT5P 2ndのヴォーカルの艶感は圧倒的です。ただ、やはり音に空間の壁ようなものを感じ、その中で音が反響しているイメージです。
SRS-002はあくまでも頭内定位なのですが、まるで壁を感じさせません。例えるならコンサートホールと野外ステージの違いみたいな感じで、音に詰まりや曇りといったものがまるで無いのです。
SRS-002の後にLayla Universal fitを聞くと、一気に空間が縮まり、アタックの質感が強烈になるので違いが顕著に分かります。Layla Universal fitは音の密度がとても高く、低音域のアタックなどもとても濃いです。それと比較すると、SRS-002はまるで絹糸や流水のようにクリアで澄んだリスニングが可能です。また、ヴォーカル帯域の解像度ではLaylaを上回っていると感じました。音の広がりがとても開放的なので、それぞれの音が混濁することがなく耳まで届くためそう感じるのでしょう。
・GOIN'!!!
ハイレゾ音源です。
やはり、このイヤホンの開放感はあまりにも凄まじいです。全ての音が分離して聞き取れるほどに空間の分解能が高く、低音のアタックを強めたり、高音域を強調したりと言った一般的なイヤホンのチューニングの枠からは完全に外れた1本だと思います。密閉型のカナル型イヤホンでこの音を出すのは不可能に近いでしょう。
唯一私が知る中で一番近いイヤホンを上げろ、と言われるなら、私はIE800Sを挙げます。真面目に聴き比べた訳でもないので細部は全然異なると思いますが、圧倒的な音の開放感という点では似通っています。
装着感の軽さも相まって、まるで耳に何もつけていないような、そんな感覚にすらさせてくれる、そんな不思議なイヤホンです。
ちなみにこれは小話なのですが、このイヤホンの背面のメッシュを指で塞ぐと明らかに音が曇ります。また、耳の穴に挿入する際はパキパキといった振動板が潰れる音が聞こえます。
高音域
これは非常に特殊な鳴り方です。静電型と言うだけあって主張はかなり激しいのですが、全く刺さることの無い音色です。また、金物の鳴り方のリアルさは目を見張るものがあります。
ヴォーカルラインなどのさ行などは全く刺さらないのですが、ハイハットなどの金物の鳴り、シンセサイザーの音色などはとても強く出ます。面白いチューニングだと思います。
中音域
ヴォーカル含めた中音域の透明感はカナル型イヤホンの常識をはるかに超えていると感じます。どこまでも見透せるようなクリアな質感で、それでいて音場を広げただけの音が遠いようなチューニングとは全く違う特殊な音を持っています。今まで色々なイヤホンを聞いてきましたが、ここまで透明感のある音色のイヤホンはほぼ存在しませんでした。上位互換とか下位互換とかそういう話ではなく、全く別物です。それでいて一応カナル型イヤホンなので、音のスケール感はカナル型イヤホンのように全体を見通せるようなスケール感に治まっています。なので、開放型ヘッドホンともまた違う楽しみ方ができると感じます。
低音域
解像度は高いですが、量感は控えめです。中高音域寄りのチューニングなので、開放的な印象含めて低音がズンズン響くようなイヤホン、例えばLegend XとかVALKYRIE MKII、LaylaやRoxanne、他に例えるなら中華イヤホンみたいなチューニングの好きな方には刺さらないかもしれません。
どちらかと言うとT5P 2ndのように、低音の音色と言うよりは空間を震わせる空気感を再現するような繊細な低音です。
あとがき。圧倒的な個性のあるイヤホン
あとがきです。このイヤホンは、値段やカナル型イヤホンという枠組みを超越した領域にあります。このイヤホンでしか聞けない音がある。そんな表現はこのイヤホンにこそ相応しいでしょう。
私のような既に複数のイヤホン・ヘッドホンを所有していて、どんなイヤホンを視聴しても決め手に欠ける、なんて人は値段もお手頃ですしこのイヤホンを試してみては如何でしょうか。奇抜で安っぽい見た目、STAXのコンデンサー型という敷居の高さ、そういう偏見をとっぱらって聞いてみると新たな発見があるかもしれませんよ。
それでは、以上です。
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