アンプのバランス接続は無意味?プラシーボや嘘?音質は変わらないのか確かめてみた
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本日は、イヤホン、ヘッドホンにおけるバランス接続についての記事になります。
それではどうぞ。
バランス接続とは?普通と何が違う?
バランス接続とは、アンバランス接続のように左右の信号を共通のグラウンドで送るのではなく、左右チャンネルの+-の信号を別々の経路でドライバーまで送る仕組みです。
通常のケーブル、つまりアンバランスの3.5mmジャックはケーブルの内部が3本の芯で出来ています。L、R、そしてGND(共用線)です。
これがバランスケーブル、2.5mmや4.4mm、4pinXLRなどになると、内部の線材が4本になります。左右の信号を完全に分離できるため、クロストークが減り音の濁りが減ったり分離が良くなったりするという訳です。
バランスアンプについて。グラウンド分離とフルバランス
上ではバランスケーブルについての話をしましたが、次はアンプについての話です。
まず、バランスアンプには2種類が存在します。それが擬似バランスと、フルバランスです。前者はグラウンド分離とも呼ばれています。
フルバランスアンプは、いわゆる一般的なバランスアンプのことを指します。これは回路が2倍になるため大型化+高コスト化しますが、出力電圧が2倍になるという特性があります。
対して擬似バランスアンプは、フルバランスアンプと比較した場合サイズを小型に出来ますが、出力電圧はアンバランスとバランスで変化がありません。
例えばifi audioのmicro idsd signatureは4.4mmジャックと3.5mmジャック両方を搭載したバランスアンプですが、どちらのジャックも出せる電圧は同じで、グラウンドを分離しただけのものになります。これがいわゆる擬似バランスアンプですね。
ちなみに擬似バランスは意味が無いのか、というと、擬似バランスの場合でもバランスケーブルを使用すればグラウンドが分離した状態で信号をドライバーまで送れるため、左右のクロストークの低減によるセパレーションの向上などの効果はちゃんと見込めます。というより、バランス接続の一番のメリットが左右のクロストークの低減なので、擬似バランスでも電圧が足りているのであればフルバランスにする意味はあまりないとも言えます。
他にはバランスアンプであっても、低インピーダンスの場合バランスよりアンバランスの方が電圧が高い、なんてアンプも存在するので、バランスだからアンバランスより上、なんて考えは私は正直なところあまり好きではありません。
他にはバランス接続はノイズが増えるということで敬遠しているメーカーも存在します。ifiとかChordとかがそうですね。
あとはバランスアンプは単純にコストが2倍かかるので、単純にいい音のアンプを作りたいのならシングルエンドの方が安く済む、という問題もあります。
聴き比べてみた。HP-A4BLは擬似バランス?
というわけで、ここからは実際に聴き比べてみて、どのくらい差があるのか確かめてみたいと思います。

バランスアンプはFOSTEXのHP-A4BLを用意しました。6万円ほどのお手頃な据え置きヘッドホンアンプです。現在は生産が終了しており新品ではなかなか見かけません。
ちなみにこのHP-A4BL、ネット上では擬似バランスアンプだという声もありますが、このアンプはTPA6120を2枚搭載したアンプなのでバランス接続にするとちゃんと出力は2倍になります。実際、メーカーの公式サイトでも出力はバランスでしっかりと2倍になっています。
ヘッドホンは、同じくFOSTEXからT60RPを用意しました。鳴らしにくい平面駆動型ヘッドホンなので、バランス接続の恩恵は受けやすいと思います。
今回は、純正ケーブルと純正バランスケーブルのET-RPXLRにリケーブルして音質差を確かめてみたいと思います。
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本当はバランスケーブルはアンバランスに変換しても使えるので、バランスケーブルと変換ジャックを使って聞き比べるのがいちばん厳格なのですが、まあ同じメーカーのケーブルということでそこまで大きな音の差は無いでしょう。というか4pinXLRを標準プラグに変換するケーブルとかニッチすぎて売ってないか売っててもかなり高いと思う。
・己龍 私塗レ
まずはアンバランスで一通り聞いてから、バランス接続に変えてみました。とは言っても過去のレビュー記事でバランス接続で音が変わることは確認済みなのですが。
アンバランスでのT60RPの音は、やはりかなりコストパフォーマンスの高いヘッドホンだな、と思わさせられるクオリティですね。とにかく音がクリアで、付帯音の存在をまるで感じさせません。
高音域はなかなかに硬質ですが、刺さりはしません。中音域はとにかくクリアで、分離感が圧倒的に高いです。低音域はかなり締まっており、音の粒立ちが極端にいいです。
さて、次はバランス接続です。音に関してですが、これはやはり音が変わりますね。低音域が明らかに重たくなり、ヴォーカルラインも近くなりました。
ヴォーカルラインが近くなる、というと音場が狭まったような印象を与えるかも知れませんが、そうではなく、ヴォーカルラインのみが全体的に近くなり、楽器隊の音色はより立体的に鳴るようになっていますね。
聴き比べてみると、アンバランスの音色はどこか音が遠いような印象が拭えません。
低音域の質感の向上は、よりリアルなどっしりとした音色が付与されたという感じでしょうか。真空管系の音なんかを想像してもらえるとわかりやすいと思います。
リケーブルのように全体的な音色が変化すると言うよりは、全体的な音の質感はほぼ同じなのですが、バランス接続はより情報量が増え、また音に余裕のようなものを感じられます。バランス接続に比べると、アンバランス接続は音の艶感やパワーなどが足りておらず、どこか細いような音色に聞こえますね。
・アルルカン SynonyM [再録]
やはり、バランス接続の方が音に余裕を感じます。アンバランス接続はヴォーカルラインの定位が少し浮いているような感覚だったのですが、それがバランス接続ではピタッと安定するようになりました。
アンバランス接続ではやはりヴォーカルが少し遠め です。ヴォーカルラインが心地よく聞こえる音量まで上げると、今度は楽器隊がうるさくなる、というような問題がバランス接続では綺麗に解決されます。
ただ、バランス接続が全て優れているというかと言うとそういう訳ではありません。バランス接続はサビの高音域が少し刺さるようになってしまっています。音の押し出しが強くなったからでしょうか。
サビ以外は全体的に音に余裕のようなものが生まれており、基本的にはアンバランスの上位互換なだけにその部分だけが勿体ないですね。
・Palette
やはり、バランス接続はアンバランスと比較して音に余裕が出ますね。歪みっぽさが少ないというか、音にメリハリがあるというか、説明しにくい差が生まれています。
リケーブルだったりイヤホンの比較ならもっとわかりやすく説明できるのですが、バランスとアンバランスの差は説明が難しいです。差は確かにあるのですが、それが何由来か明確に示すのがとても難しい。こればっかりは聞いてみないと分からないと思います。
ひとつ言えることとして、バランス接続の方が音量を上げた際の音色の変化が少ないというか、耳障りになる成分が少ないです。私は比較的大きめの音でリスニングするタイプなのですが、アンバランス接続ではヴォーカルラインなどが一番気持ちよく聞こえる音量まで上げてしまうと他の音がうるさくて音量を下げざるを得ません。また、アンバランスの場合音量を上げすぎると高域に歪みっぽさも生まれてしまい、音割れのような不快感を感じます。しかし、バランス接続の場合は普段聞く音量から一段階ほど上げても全く不快感がありません。
これはバランス接続による電圧の向上による効果なのか、もしくはグラウンド分離によるクロストークの低減による効果なのか、私にはよく分かりませんが、確かに音は変わるということがわかりました。
あとがき
今回比較してみてわかったとおり、バランス接続は確かに音は変化します。
しかし、アンバランスがバランス接続の下位互換というのにはやはり私は賛成できません。というのも、シングルエンドでも音質のいいアンプはこの世に腐るほど存在するからです。また、上でも書いたようにフルバランスアンプはシングルエンドと比較して2倍のコストがかかります。果たしてそれに見合う価値があるのかどうかと言うと、私個人としてはグラウンド分離でも十分なんじゃないかと思います。
結局、バランスとアンバランスどちらがいいかは、やはり実際に聞いてみないと分からない、というのが結論になりますね。
ただ音の変化自体はしっかりと感じられるため、リケーブルする楽しみを向上させてくれる要素であることは間違いありません。また、左右の信号分離や出力の増強などバランス接続には大きなメリットが存在します。実際今回の比較でも大きな音の変化を感じられた訳ですし。
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ではここで私が個人的にオススメするバランスアンプをひとつ。ifi audioのxDSD Gryphonです。
フルバランスで、ボリュームノブの作り込みやそのクリアかつスケール感の大きい音など非常におすすめできるポタアンですね。
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あとは据え置き機で安くていいバランスアンプである、定番のZEN DACです。ここまで安くて、尚且つフルバランスで、ifiお得意の低音ブーストスイッチまで付いているという優れものです。
それでは、以上です。
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