中古で激安、Fiio E12の音質をレビュー。ハイパワーなアナログポタアン
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本日は、2013年6月に発売されたFiioのポータブルアンプ、E12をレビューしていきたいと思います。
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それではどうぞ。
あのMOJOやHugo2よりハイパワー?ホワイトノイズは少しあり

引用:https://s.kakaku.com/item/K0000518563/images/
このアンプは小柳出電気商会から販売されていました。価格は18900円と、当時の相場が分からないのであれですがまあ最低限の品質はありそうなラインの値段のアンプですね。今現在はだいたい中古で5000円以下で販売されています。
ヘッドホンアンプの見た目自体は非常にシンプルです。ヘアライン加工されたシンプルな黒いボディに、ローレット加工されたボリュームノブとゲイン、クロスフィード、バスブーストスイッチ、あとはリセットボタンという謎の穴があるのみです。ゲイン、クロスフェードスイッチはなぜか奥まったところにあるので、切り替えるにはシャープペンシルなどの細い棒が必要です。
裏側にはPortable Headphone Amplifier 便携式耳机効率放大器と書いてあり、まさに中華という感じ。今やDAP界を牽引するメーカーの一つであるFiioが昔はこんなのだったと思うと少し時代の流れを感じますね。
このポタアンの特徴としては高出力、つまりハイパワーなことが挙げられることが多いです。2012年4月に発売した「E17」、同年1月に発売した「E07K」と比較して、約3倍(32Ω時)となる出力があります。出力は公称で600mW(16Ω)、880mW(32Ω)、160mW(300Ω)と、かなりハイパワーです。
参考までにChord ElectronicsのMOJOの出力が35mW(600Ω)、720mW(8Ω)、Hugo2の出力が94mW(300Ω) 740mw(33Ω)1050mW(8Ω)です。公称スペックだけではあのHugo2やMOJOを上回っていますね。正直なところ本当かよ?とは思いますが、メーカーの情報ではそうなっています。
ちなみに私が愛用しているifi audioのmicro idsd BLはTurbo (8.0V max/4,000 mW@16 Ohm)、Normal (4.0V/1,000 mW@16 Ohm)、Eco (2.0V/250mW@16 Ohm)です。
メーカーごとに図るインピーダンスがばらばらで分かりにくいので、最大出力で表すとMOJOが14Vp-p、micro idsd BLのTurboが28Vp-p。DAPだとAstell & KernのKANNが10Vp-pほど。最近だと超巨大DAPとして話題になったAstell&KernのACRO CA1000がバランスで42.5Vpp(シングルエンドだと半分)です。
あとこれは小話ですが、ポータブルヘッドホンアンプの中でも最大級に馬鹿げた高出力を誇るmicro idsd Diabloの出力は32Ωで4980mW、最大出力64.3Vppというとんでもないものになっています。バランスアンプとはいえここまでの高出力が必要なヘッドホンなどこの世に存在するのでしょうかね。
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話が逸れたので本筋に戻りましょうか。このアンプのオペアンプにはTI OPA1611AとLME49600のコンビが使用されており、他にはWIMAコンデンサー、ALPS ポテンショメーターなどの高品質なパーツが使用されています。
適応インピーダンスは16Ω~300Ω、質量が158g、約2時間の充電で最大12時間の使用が可能です。まあとても古い機種ですし、私の場合中古で手に入れたためどのくらいバッテリーが劣化してるかもわかりませんが……
ちなみに充電しながら使用することが可能ですから、バッテリーが劣化しても完全な文鎮になることはありません。
(リチウムイオンバッテリーは充電しながら放電ができない仕組みのため、充電しながら使用出来るということは基盤に直接電力が送られている証明になるため。詳しくは下記記事参照)
ホワイトノイズに関してはそこそこあります。特にEMPIRE EARS ODIN(3Ω)のような極めて低インピーダンスのイヤホンだとホワイトノイズが目立ちます。
ローゲインではうっすらとノイズが乗っているという感じで、音楽を再生すれば気になりませんが静かなイントロや間奏などでは気になるかもしれません。
ちなみに音量を上げ下げしてもホワイトノイズの音量自体は変わりません。
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campfire audio ANDROMEDA 2020のような超高感度のイヤホンだと、ホワイトノイズはもはや無視できないレベルで鳴り響きます。ハイパワーなアンプだそうですから、ノイズは少しは仕方ないのでしょうが、それでも高価なアンプになればなるほどノイズフロアは下がるので2万円という元値をどう見るかにより評価は変わってきそうです。ちなみにホワイトノイズのレベルはFX-AUDIO PH-01JやEK JAPAN TU-HP01とあまり大差ありません。
ただODINを使う限りTU-HP01は真空管特有のマイクロフォニックノイズが少しうるさく、PH-01Jの方はブツブツノイズが少し乗ります。それを見るにノイズ対策はこのアンプが1番行われていると考えていいでしょう。
JH Audio Laylaのような低能率系のIEMだとホワイトノイズはかなり小さくなるので、そのようなイヤホン向きかも知れません。64audioとかEMPIRE EARSみたいな極端な低インピーダンス系のイヤホンを使う人には向かないアンプだと思います。
ちなみにbeyerdynamic T5P 2ndのようなヘッドホンであれば、低インピーダンスでもホワイトノイズは全く聞こえないので、やはりこのアンプはハイパワーを売りにしていることもあってヘッドホン向きのアンプなのでしょうね。
ちなみにパワーはローゲインでも相当なもので、Laylaのような比較的鳴らしにくいイヤホンでも音量はほぼ最低に絞った状態で適正音量でした。幸いギャングエラーはほぼ無いため、これでもまともに使用できます。
音質は上流の音色を素直に出すシンプルな音色
それでは音質のレビューに入っていきます。今回は比較用アンプとしてEK JAPAN TU-HP01、FX-AUDIO PH-01Jを用意しました。
DACはmicro idsd BLのラインアウトで、イヤホンは主にJH Audio Laylaを使用しました。DACチップはバーブラウン DSD1793のデュアルになります。
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・己龍 虚仮威
まず、このアンプは確かに非常にパワーがあります。
TU-HP01と比較すると、TU-HP01はハイゲインでようやくローゲインのE12と同じレベルの音量という感じです。
音としてはTU-HP01の方がより濃密で艶を感じる音色です。一つ一つの音がとても伸びやかで艶っぽく、とても広大なスケール感を醸し出しています。Laylaとの組み合わせはまるで高品質な密閉型ヘッドホンのようです。
特にギターなどの楽器隊の音色の艶感が素晴らしいですね。
それと比較するとE12は比較的大人しい鳴り方で、スケール感はそこまで大きくもなく、そこまで特徴的な部分もない、素直なアンプという感じの印象です。
PH-01Jの方はE12と比較するとかなりドンシャリなサウンドですね。パワーはTU-HP01と同程度か少し上といった所でしょうか。
流石に、ここは値段の差が顕著に出ています。今回の三機種の中では一番ドンシャリなのでぱっと聞いた感じでは高解像度でいいかも?と思えるのですが、少し耳を済ませてみると高音域が歪みっぽく耳障りなことに気付きます。ヴォーカルラインにも艶感がなく、少し歯擦音が目立ちます。
ちなみに値段が一気に跳ね上がりますが、一応micro idsd BLと比較してみました。パワーはmicro idsd BLのECOモードと同等くらいですかね。
流石に、ここまで値段の差があると音質の差は顕著です。micro idsd BLは解像度がとても高いアンプなのですが、その部分でまず非常に差を感じます。特にヴォーカルラインと楽器隊の分離感が素晴らしく、空間の見晴らしの良さもレベルがまるで違います。
より具体的な差を言うなら、E12はベースラインが飽和気味に少し膨らんでしまっているのに対し、micro idsd BLはしっかりとその細部までをきちんと描写できています。
今回はDAC部分にmicro idsd BLを使用しているためアナログアンプ部分の比較となるのですが、やはり高価なだけあってmicro idsd BLは音質ではかなりの差がありますね。また、ホワイトノイズも皆無です。
ただ、E12の音の傾向はmicro idsd BLと少し、いや結構似ています。そう考えると、このアンプは上流の音を素直に出す系統のアンプなのかもしれません。
ちなみにLaylaではなくODINでも聞き比べてみましたが、ODINの場合でも音の質感や音の変化の仕方は似ていました。やはりベースラインが少しぼやけます。ただ、変化の度合いはODINの場合の方が大きい気がします。
・NOCTURNAL BLOODLUST 銃創
このアンプには低音ブーストスイッチが付いているのですが、その効きはかなり強めです。ifiのXBassのように聞こえるかギリギリの重低音を持ち上げる、というような効果ではなく、露骨に低音域が盛り上がります。少々ブーミーな印象も否めませんが、迫力はかなり増しますね。
クロスフィード機能に関しては正直なところそこまで効果は感じません。多少低音域が弱まるだけで、特に前方定位になったり特段音場が広がることはありません。
音としては相変わらずmicro idsd BLに似ています。多少音の分離感が悪く荒っぽい部分も感じますが、やはりこのアンプは上流の音を素直に出す系統のアンプなようです。
この価格帯で奇抜な音の味付けをしようとするとどうしても荒が出てしまうと思うので、正しい選択だと思います。このサイズのハイパワーなアナログアンプということで恐らくはDAPとの組み合わせを想定して開発された商品だと思うので、音色を変えずパワーに余裕を持たせるというのは案外理にかなっています。
TU-HP01と比較すると、やはりTU-HP01は真空管なだけだって音に温かみがあります。ただ、この曲では多少音が膨らみすぎていて篭ったような感じがしてしまいます。ここまでラウドな曲と真空管は合いませんね。E12の方がクリアな音色で高解像度です。
PH-01Jの方は相変わらず高音域が少し歪みっぽく、特にこういうラウドな曲だとシンバル類がうるさすぎて耳が痛くなります。このポタアンも値段の割には非常に良くできているとは思うのですが、流石に万超えのアンプと比較するとダメですね。
ちなみにこちらもmicro idsd BLとの比較をODINでやってみましたが、やはりLaylaよりODINの方が変化は大きいです。具体的にはイントロのドラムの高速フィルインの粒立ち具合がmicro idsd BLの方がシャッキリしています。また、高域もmicro idsd BLの方がしっかりと出ていますね。
E12の方はシンバルの音が少し伸びきらずヴェールのようなものがかかっているような音です。それでもかなり音は似ているので、多分大抵の人は同じレベルだと感じると思いますが……
・アルルカン ジレンマ
まず恒例のmicro idsd BLとの比較ですが、やはり音は似ています。分離感や音像の鮮明さなどでは差が出ていますが、全体的な音色は言われなければ気づかない人もいるかもしれない、と言うくらいには瓜二つです。
ではTU-HP01と比較するとどうかというと、こちらはやはり音の色艶がとても強いです。ただ、Laylaとの組み合わせの場合ラウドな曲では色艶が強すぎて篭ったような印象を受けなくもありません。
特にTU-HP01は楽器隊の音色が強くブーストされるので、このようなラウドな楽曲だとヴォーカルが奥の方に引っ込んでしまうような感覚があります。やはり、E12の方が高解像度に感じます。
TU-HP01はかなりウォーム系のアンプなのでソリッドな音のイヤホンとの相性はいいですし、ポップスやアニソンを聞く際はこのアンプも非常にいい音を奏でてくれるのですが、Layla+ラウド系との相性は正直なところいいとは言えませんね。
ODINを使ったmicro idsd BLとの比較では、この曲でもやはり高域部分がmicro idsd BLの方がよく伸びます。そのため、バスドラムのキックの粒立ちもmicro idsd BLの方が良く感じます。他にも、轟音の中に埋もれた微細な音色がmicro idsd BLの方が聞き取りやすいです。
しかし、DACが同じだと違うアンプでもここまで音が似るというのは面白いですね。
ただCayin C9を試した時はDACが同じでも音はかなり変わったので、このアンプは元々の音の傾向がmicro idsd BLに似ているか、上流の音を素直に出すアンプなのか分からないのは少し困りものですが。
しかしもしmicro idsd BLに似ているのだとしたら、コストパフォーマンスはかなり高いと言えるのではないでしょうか。
・こいかぜ ハイレゾ版
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まずはmicro idsd BLとの比較から。やはりというかなんというか、かなり音は似ています。流石にラストの合唱部分やベースの音色などは分離感で差が出ていますが、それ以外の帯域はまさに瓜二つと言った所でしょうか。上流の音をそれほど素直に出すアンプです。
TU-HP01と比較すると、やはりこのような曲ではTU-HP01の方が強いですね。ヴォーカルラインの色艶、ベースの柔らかく解けるような低音。そして広大なスケール感。表現力の部分でE12は大きく差をつけられていますね。
ODINでのmicro idsd BLとの比較では、この曲ではスケール感に主に差が出ました。micro idsd BLの方がどこまでも音が抜けていくような開放感が強く、同時に伸びやかで艶っぽさのある音色です。音色自体は相も変わらず似ていますが、今回の4曲のうちではいちばん変化を感じやすいですね。
なんというかE12の方は静寂感が足りず、メリハリのない音色に感じました。micro idsd BLと音色自体は似ているのですが、静けさの中から音が突然現れるようなmicro idsd BLに対しこちらはずっと煩いまま、というような差があります。
ラウドな曲では誤魔化しが聞いたようですが、このような静かめのクラシックやオーケストラなどでは流石にその差は埋めようが無いみたいですね。これは「あらかねの器」という曲でも同様でした。
SnapdragonVSDSD1793
このアンプの素の実力が知りたかったというか、DACが音に及ぼす影響がどの程度か知りたかったのでスマホのイヤホンジャックからのAUX接続と、micro idsd BLのラインアウトで音質を聴き比べてみました。曲はこいかぜ、イヤホンはODINを使いました。
ちなみにラインアウトの音量を調節できる機能は聴き比べの際には何気に便利でした。signatureでは廃止されたみたいですが。
比較してみると、micro idsd BLをDACとして使った方が音が重厚で、濃密な印象を受けます。対してスマートフォンからのAUX接続は音が少し掠れ気味で、特に高域がジャリっとしています。
また、サビのような音が一気に増える場面でもmicro idsd BLの場合綺麗に音が整理されているのに対し、スマホの場合音が混濁してしまっています。
更に、低音域の空間を伝う振動の再現がmicro idsd BLの方が段違いで上手いです。そのため音場も広く感じました。
ただ、他のポタアンと比較した際みたいな完全に別物の音、という感じにはなりませんでした。
比較してしまうと、音色の艶っぽさや静寂感などは遠く及びません。しかし、音色はなかなかに似ています。
ちなみに、試しに別の曲ならどうなるんだろうとE12とmicro idsd BLでDrastic Melodyという曲を聞き比べてみたのですが、その曲では音の迫力にかなりの差が現れていました。具体的には重低音の再現率がやはりmicro idsd BLの方が何枚も上手です。音色が似ているとはいえ、曲により変化の度合いも異なるみたいですね。
あとがき。ある程度上流が揃っている人が遊ぶにはいいかも
というわけであとがきです。このアンプは上流の音色を素直に増幅するタイプのアンプなので、上流がある程度揃っている人が遊ぶにはいいポタアンだと思いました。
例えば私は普段FOSTEX HP-A4BL→FX-AUDIO TUBE-01J→Fiio E12、みたいな感じで、多段構成の最終段のアナログアンプとして使っています。
(micro idsd BLのアナログ接続の調子が悪いため)
例えば今現在DAPを持っているけど、ハイインピーダンスのヘッドホンを鳴らすのには力不足感が否めない、とか、中華の真空管プリアンプを試してみたい、という人には安価で音もそれなりというもってこいなアンプだと思います。この価格帯で買えるアナログアンプなんてほぼまともなものは存在しないので、選択肢としてはかなりアリでしょう。
というわけで、今回はここまでとなります。
それでは、以上です。
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