超高級アナログアンプ、ifi audio Pro iCANの音質をレビュー。Pro idsdとの組み合わせで約70万
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本日は、ifi audioのフラッグシップアナログヘッドホンアンプ、Pro iCANの音質レビューになります。
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それではどうぞ。
スペック。超ハイパワーな真空管搭載バランスアンプ。コスパは悪い

まず最初に申し上げておくと、Pro idsdとPro iCANの組み合わせですが、絶望的にコストパフォーマンスは悪いです。
この音の方向性でしたらmicro idsd signatureで十分に大抵の人の欲求は満たせるでしょうし、ここまでの大金を出すとなると最強のポタアン、Hugo2やDAPでも相当いいものが買えてしまいます。
なんなら据え置きでもFiioのK9 Pro ESSなんかは音質的には非常に評価は高いですがお値段はこのセットの4分の1以下です。
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セパレートで楽しみたいのだとしても、ここまで高価なものを用意する必要性も感じません。ZEN Signature Set 6XXで十分です。
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というかそもそもの話をすると、Pro idsd単体でも名前がiDACではなく複合機idsdなわけで、ヘッドホンアンプ回路はしっかりと作り込まれた超高品質なものです。もちろん、音質も単体で十分すぎるくらい高音質です。
と、こんな感じで、Pro idsd+Pro iCANのセットは相当コストパフォーマンスが悪いということは最初に言っておきます。
それでも、一応音質的には導入するメリットはあるので、本日はそんな感じの音質レビューになっています。

まず、Pro iCANのフロントパネルがこんな感じです。3ピンXLRがバランス用に2つあり、コンボジャックなので右側が普通の6.35mmヘッドホンジャックとして使えます。配線は左側が「L- R- GND」、右側が「L+ R+ GND」だそうです。
4ピンXLR端子も搭載されています。最近は4.4mmが主流ですが、大型ヘッドホンアンプなのでこれもあると嬉しい人は多いと思います。
その下に3.5mmアンバランスイヤホンジャックと、Sバランス4極、つまりグラウンド分離の3.5mmバランスジャックがあります。このタイプはifi audioだけかと思ったのですが、どうやら中国系メーカーの「3.5mm PROバランス端子」や、HiFiMANが採用している3.5mm 4極バランス端子など色々種類があるみたいですね。
ちなみにifi audio曰く「Sバランス」とのことです。理想としてはmicro idsd signatureのように形だけでも2.5mmや4.4mmにしてくれた方が刺し間違える心配がなくて良かったのですが、まあその辺は仕方ないとして割り切ります。
1番左のノブはインプット切り替えです。その横にあるのがXBassスイッチ、つまり低音増強スイッチですね。
右側は大きな方がボリュームノブで、小さいノブが3D Holographicという3Dクロスフィード機能の切替スイッチです。XBassやクロスフィードはmicro idsdシリーズでは効き目が固定でしたが、Pro iCANでは3段階で選べるようになっています。
その他にはPro idsdと同じく、真空管モード切替スイッチとゲイン切替スイッチがあります。アンプ回路がSolid State・Tube・Tube+の3種類、ゲインも0・+9・+18dBの3段階です。
Pro iCANは現実的な出力だったPro idsdと比較してかなり高出力に作られています。2Vrms、アンバランスRCA入力で最大30Vp-pと、据え置きにしてもアンバランスでこれはかなり強力な部類です。ここまで出力が高いとこの世のどんなヘッドホンでもらくらく駆動できるでしょう。
ちなみに3.5mmアンバランスイヤホンジャックは6.35mmと比較してアッテネータで出力がかなり低く抑えられています。その分出力インピーダンスは僅かに高く、ノイズフロアも控えめです。

リアパネルは入力用のRCAが3つとXLRが1つ、ライン出力用にRCAとXLRが1つずつあります。そしてDC給電ジャックと、Pro idsdと同じくDC出力ジャックがあります。
その他にはHDMIみたいな形状の「ESL LINK」というジャックがあり、これはPro iESL(約20万円)というifi audioが出している静電型ヘッドホン用アンプに接続するためのジャックのようです。全部揃えている猛者はどれくらいこの世にいるのでしょうかね。

ACアダプターはPro idsdと同じく15VのiPower Plus 15Vが入っていましたが、Pro idsdのものとは違いアースが付いていませんでした。実用上は問題ないと思いますが、なぜ同じモデルでアース無しとありがあるのかはよくわかりません。
ちなみにこれもPro idsdと同じく、9~18Vまで対応しています。

一つだけ謎な点を上げるとすれば、先発機なので仕方ないといえば仕方ないのですが、ボリュームノブが電源をオフにした際に自動で0の位置まで戻りません。Pro idsdと同じくモーターは内蔵しているのですが、Pro idsdとは違いボリュームは電源を落としても据え置きのようです。
かっこよさとかプロっぽさは置いておいて利便性の面で見ればむしろこちらの方が便利だとは思いますが、それでもモーターで動くボリュームノブは見ていて面白いのでどうせなら搭載しても良かったと思います。Pro iCAN signatureはどうなっているんでしょうかね。
音質。シビアすぎるPro idsdの音色をまろやかな美音系に
それでは音質のレビューに入っていきます。
今回はPro idsdとRCAで接続しました。ちなみに出力は可変、モードはDSD1024を使用しました。
イヤホンはEMPIRE EARS ODINを使用しました。
・アルルカン ジレンマ
まず、Pro idsd直とPro iCANを通した時のサウンドの比較になりますが、素の状態のPro iCANの音はPro idsdの解像度をそのままに、より美音系でマイルドなサウンドにした、という感じです。Pro iCANを聞いた後にPro idsdを聞くと、こんなに硬質でジャリジャリしたサウンドなのか、と感じてしまいます。
そして低音強化のXBassです。聞こえないくらい低い帯域の重低音を底上げしてくれるので、硬質すぎるPro idsdの音色をよりマイルドにしてくれます。
10Hzでも十分に効果は感じるので、普通はこれで充分だと思います。これが20Hzになるととんでもないくらい重低音が増強されるので、これは低音の少ない開放型ヘッドホンとか、そういうのと組合わせる時に使うといいでしょう。
ちなみに真空管モードに関しては、Pro idsdと比較して、少し柔らかくエッジの取れた音という印象です。
なんというか、Pro iCANはPro idsdの音がよりmicro idsdシリーズに近づく、という言い方もおかしいですが、よりマイルドで聞きやすく、万能性の高いサウンドになる、という感じがします。ifi audioというと解像度は高い反面高域のエッジが強すぎて耳が痛くなる、というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、Pro iCANを通して音を調整すればそれがかなり弱まり、なかなかの美音を出すように変化します。
・己龍 私塗レ
で、実際のところ、micro idsd BLと比較してどのくらい高音質なのか?というのが気になるところでしょう。
Pro iCANの販売価格は286000円(税込)です。Pro idsdが40万円ちょっと程度なので、合わせて約70万円程のシステムになります。
そんな超高額なシステムです。7.5万円のmicro idsd BLと比べて格段に高音質でなければおかしな話だと思うでしょう。
しかし、比べてみるとどちらも違う音色でどちらも良い、というのが本音になってしまいます。
micro idsd BLは確かにスケール感や音場表現ではPro idsd+Pro iCANのシステムに大きく劣ります。しかし、クリア感やヴォーカルの近さ、パワフルなパンチなど、ポータブルとしては異例なほどの高音質を備えています。
どちらかと言うとPro idsdをPCMモードにした時のほうがmicro idsd BLの音色には近いです。
私的にはこの曲ではDSD1024、Tube+の組み合わせが一番好きなのでそれと比較すると、micro idsd BLは音がぎゅっと締まっており、Pro idsd+Pro iCANと比較すると音量をグイグイ上げてノリよく聞くのに向いていると思います。
それと比較すると、Pro idsd+Pro iCANはもっと高域もシビアになりますし、低域はしっかりと空間的スケールの余裕を持って鳴らしてくれますが、音量は控えめでまったりと楽しむようなサウンドになっていると思います。
つまりヴォーカルメインでノリのいい音を聞くのならこんな高価で持ち運びもできないシステムを構成する必要性は万に一つもありません。micro idsd BLで十分です。
ただ、だとしてもPro idsd+Pro iCANのサウンドには凄いものがあるので、無価値かと言うとそんなことは全くありません。音の情報量がまるで違うので、音に包まれるような感覚になりたい時はこのシステムの方がいいでしょう。
・葉月 Phoenix
Pro idsd+Pro iCANが真価を発揮するのは、このようなオーケストラ曲だと思います。平均音圧の高いポピュラー音楽ももちろん悪くないのですが、シビアな音なので美音系のアンプと比べると高域が少し耳につきます。
(それが好きな人以外はifiなんぞ選ばないでしょうが)
このような曲では、micro idsd BLと比較するとキャラクターが全く異なります。micro idsd BLはヴォーカルを中心として低域も粒立ちよく鳴っているのに対し、Pro idsd+Pro iCANは音場の広さ、スケール感、そして低音域の余裕がまるで違います。情報量がまるで違うため、こういう曲を聞くとやはり買ってよかった、と思えます。
また、低インピーダンスなIEMでも違いは十分に出るので、使うのはイヤホンだしそんなパワーいらないよ、という人でもアナログアンプを導入するメリットを感じて貰えると思います。
micro idsd BLも十分に高解像度でいい音だと思うのですが、どうもPro idsd+Pro iCANの組み合わせを聞いた後だと音に芯がないように思えてしまいます。中音域の艶感がまるで違うので、やはり大型回路+ACアダプター駆動の据え置きヘッドホンアンプのパワーというか余裕を感じます。
・キズ ヒューマンエラー
このようなラウドな曲では、やはりifiのシビアさが出るため、好みが別れると思います。
音としてはやはり一級品という感じですが、整理があまりにも付きすぎてちょっと音楽の情報量に耳が圧倒されてしまうような感覚があります。低音域の再現性はとても素晴らしく、音場も広すぎるくらいなのですが、長時間まったり聞くようなサウンドではありません。最も私は普段から短時間のリスニングが多いので、このようにぱっと聞いて高音質、というサウンドは好みなのですが。
ちなみにPro idsdのラインアウトは上で書いた通り可変にしてあるので、各々のボリューム位置によりサウンドも若干変化します。Pro iCANの増幅度合いを増やした方が私は好みのサウンドでした。
・堕ちる果実
やはり、非常にスケール感が広大ながら音の情報量が圧倒的です。
Pro idsdの音は非常にシビアなので、Pro iCANを導入することで美音系に調整することが出来ました。それだけで購入した価値があると言えるでしょう。
micro idsd BLと比較すると、やはりmicro idsd BLの音は高音質です。 ですが、Pro idsd+Pro iCANの音を聞いた後だと少し軽さが否めません。音の余韻、艶感がまるで違います。
具体的には低音域のメリハリ、制動性がPro idsd+Pro iCANの方が格段に上回っています。そのため、音のスケール感の広大さに大きな差が出てしまっています。
とは言っても価格が価格です。大抵の人にはこの価格差を許容することは出来ないでしょう。一部のとち狂ったマニアくらいしかこんなものは買わないでしょうね。例えば私みたいな。
この曲はそこまで高域が主張してくるミックスでは無いので、トランジスタモードやPCMモードでも高解像度で綺麗な音色を聴けました。やはりここまで多機能だと、曲により真空管か、トランジスタか、Pro idsdの方はPCMかDSDか、などと迷ってしまうので、正解がないというのも少し難しいですね。
・BabyKingdom 満天モンキーウェイ
ここからODINのイヤーピースをAcoustune AEX50に変更しました。FinalのEタイプ Sサイズにあった高域の歪みっぽさがなくなって非常にいい感じです。
Pro idsd+Pro iCANのモードはDSD1024、トランジスタです。
さて、micro idsd BLとの比較ですが、やはりmicro idsd BLはかなり高音質です。こんな贅沢なシステムに散財したことをちょっと後悔するレベルには高音質なので、やはりポタアンだからといって侮れませんね。
しかし、やはり聞き比べると違いはハッキリとあります。イヤーピースをAEX50にしてもPro idsd+Pro iCANがシビアな高音なのは変わらないのですが、それでも情報量がまるで違います。
具体的には低音の再現能力がまるで違います。micro idsd BLではベースは軽く聞こえるくらい、バスドラムはドチッという硬い感じなのですが、Pro idsdではベースの音色がしっかり分離して太く鳴っていますし、バスドラムの音色にも空間的な余裕があります。
・秘密のトワレ
モードはDSD1024、トランジスタです。
こういう低音が強調されたというか、豊富に低音が含まれた音源ではPro idsd+Pro iCANの良さは際立ちますね。micro idsd BLと比較して、低音の沈み込みと音のスケール感がPro idsd+Pro iCANの方がより上です。比較してしまうとmicro idsd BLはどうしてもポータブルっぽい推しの強い音に聞こえてしまいますね。
ただ、ヴォーカルの音像のカリカリっとした鮮明な描写感とか、タイトで心地のいいアタック感とか、やはりmicro idsd BLも悪くありません。
というか、音の全体的な質感は同じメーカーなだけあってかなり似ているというかほぼ同じくらいのレベルにあります。音の傾向としては間違いなく同じ方向性でしょう。
ただ、Pro idsd+Pro iCANはより音の余韻、特に低音域で顕著ですが、音があるタイミングでバッサリと切られるのではなく、伸びやかに、最大音量から最小音量までしっかりと全てを描写しているという感じがあるため、スケール感が広大という表現をしています。
ちなみに上でも書きましたが、モードをPCMにするとよりmicro idsd BLの音に近しくなります。それでも音の厚みは流石にPro idsd+Pro iCANの方が数段上ですが。
Tubeモードに関してはONにするとやはり音に艶感が出て、低域の厚みがより増し、濃密ながら繊細さも持ち合わせた独特な鳴り方になります。この音はmicro idsd BLとはかなり違うので、さすがは真空管という所でしょうか。micro idsd BLの音が線が細く聞こえてしまいます。
ただ70万と7.5万の音の差がこの程度。オーディオに興味のない人からするともはや狂気の沙汰でしょう。
差は確かにありますが、イヤホンを変えた時や、他社製のアンプとmicro idsd BLを聴き比べた時のような劇的な変化はありません。ifi audio最上位グレードのモデルということで正当進化系の音だとは思いますが、より強い変化を求めるなら他社のアンプ、例えばHugo2とかを買った方が楽しめると思いますし、お金も浮きます。このアンプは余程ifiの音に魅せられた人でないと手を出しては行けない信者専用のアンプですね。
ちなみにノイズフロアはmicro idsd BLの方が低いです。これは私が出力インピーダンスによる音の癖を無くすため3ピンXLRコンボジャックにイヤホンを挿しているからだと思いますが、ANDROMEDAみたいな高感度のIEMなんかを使う人にはあまりおすすめ出来かねます。
(ちなみにEMPIRE EARS ODINはインピーダンス3Ωなのでこのイヤホンも十分に感度は高いと思いますが)
あとがき
というわけであとがきです。Pro iCANですが、買ってよかったか?と言われると、買ってよかったが半分、金銭的な後悔が半分と言ったところです。
やはり同じメーカーと言うだけあってmicro idsd BLの音色に似ているというのが気になりました。メーカーが目指す音というのがあるのでしょう。ポタアン再上位機種のmicro idsdと音が似るのは仕方ないとは思いますが、さすがにこの価格差を簡単に許容できるほど私は懐が豊かではありません。
ただ、硬質でシビアなPro idsdの音色をより美音系に近づけられたこと、音作りの柔軟性が増えたことは非常に有難いです。長く使えるものなので、長い目で見ればそこまで高い買い物でもないと思えば気分も楽になります。それに音は今まで聞いてきたDACアンプの中では最高クラスにいいので。
現在は後継機種のPro idsd signature+Pro iCAN signatureが出ていますが、こちらは多少値上がりしていますが、このクラスのヘッドホンアンプを買う人からしたら数万円の差など誤差みたいなものでしょう。音質的には私はおすすめ出来ますが、やはりコストパフォーマンスという文字を少しでも気にする方は手を出すのはやめて置いた方がいいと思いますね。
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というわけで、本日はここまでとなります。
それでは、以上です。
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